香港政府は新型コロナウイルスに関する各種規制を12月29日より大幅に緩和すると表明しました。海外からの入境者においては到着時PCR検査の義務が撤廃され、香港市内で施設の入場時などに必要とされていたワクチンパス制度も廃止となります。1月8日より中国本土から香港入境の許可手続きが再開され、1月中旬までには香港から中国本土への隔離なしの入境が可能となる方向で調整中です。
そして中国ではゼロコロナ政策からの方針転換によりこれまでの厳しい制限が一気に緩和され、その反動からか国内で新型コロナの感染が爆発的に広がっています。そんな状況ではありますが来年1月8日からは海外から中国への入境者に対する隔離を撤廃するとし、コロナ前のように中国本土から海外への渡航者も急増すると見込まれます。
こういった動きから日本政府は水際対策の強化を急遽発表し、中国(香港、マカオを含む)からの直行便を12月30日(午前0時)より成田国際空港、羽田空港、関西空港、中部国際空港の4空港のみに限定し、増便しないよう航空会社に要請しました。それに伴い訪日中の香港人旅行客にまで影響が出る事態となっています。札幌、那覇、福岡の3空港から入国した香港からの観光客は帰りの便が欠航となり、直行便のある4空港から乗り継ぎで出国せざるを得なくなりました。フライトの変更、空港までの移動、ホテル代の負担など旅行者に混乱が起きています。すでに香港航空は12月30日から1月4日にかけ、札幌と那覇に飛行機を9便手配し、香港への帰国者を乗せることになっていますが予約の取りにくい状況が予想されます。日本の年末年始休暇に続いて旧正月の休暇もあることから、香港から日本への帰国者、訪日観光客が増加していた矢先で、香港の旅行会社はツアーの中止やキャンセルの対応に追われることになりました。
休暇が続くこの時期の急な方針転換で、ようやく回復し始めた観光業界に影響を及ぼすことになってしまいましたが、香港在住の日本人の方の中にも今年の年末年始や旧正月の休暇には日本への帰国を考えている方も多いのではないでしょうか。日本で久々にご両親や親族と直接会う機会のある方、あるいは帰国されなくても休暇を利用してゆっくりオンライン帰省をされる方、将来のことについて一度深く話してみてはいかがでしょうか。
超高齢化社会に突入している日本ではすでに「終活」が定着しつつあり、身の回りの整理、葬儀の予約、介護や遺産相続について生きているうちから家族と話しておくことが一般的になってきました。香港も同じく少子高齢化社会ではありますが、まだまだ「死」について面と向かって語ることは縁起が悪いとされタブー視されています。誰しも自分や家族の最期について想像することは気が進まないものですし、健康に暮らしているうちは今すぐ考える必要がない気がして後回しにしてしまいがちです。しかしながら、海外に住んでいるからこそ離れて住んでいる身内と、将来のことを話し合っておくと良いかもしれません。
「終活」というと高齢者だけのことに思えますが、いくつであっても将来のことを考えて準備しておくことはできます。例えば親族の関係や連絡先を明確にしておく、友人の連絡先リストを作る、銀行や保険関係など大切な書類を整理して家族と共有しておくこともできます。そして遺産については保有している資産を整理して、必要であれば遺言書を残しておくことで残された家族が遺産相続で争うことが減ると言うメリットがあります。
特に海外在住者にとって、遺産相続は特殊な手続きが必要となります。日本国内の資産を相続する場合、日本の相続税が適用され課税されます。相続人と被相続人の両方が海外在住であっても、国籍を問わず、日本国内の財産は日本の課税対象となります。海外の資産を相続する場合は、相続人か被相続人のいずれかが日本に住んでいる場合は日本国内の相続税が適用されます。もし両者とも海外に居住しており10年経っている場合は日本の税制は適用されませんので、居住している年数により変わることを知っておくと良いでしょう。
また、遺産分割は日本国内にいる相続人だけで行うものではなく、海外在住であろうとも相続人は遺産分割協議には参加しなければなりません。実際に遺産相続が整えば、次は遺産分割協議書を作ることになります。これには署名、実印の押印、印鑑証明の添付が必要となります。海外在住の場合はこの実印に代わりに署名で済ますことができます。在外日本領事館でサイン証明を発行してもらい、それを遺産分割協議書と合わせて提出することで手続きが進められます。また住民票が必要な場合でも、海外在住者は日本国内に住民票がないため代わりに在外日本領事館において「在留証明書」を発行してもらうことで対応が可能です。日本在住者よりも手続きに手間がかかりますが、日本へ帰国しなくても、相続手続きを海外で進めることは可能です。