3月10日~19日の間、銅鑼湾のビクトリアパークで3年ぶりに「香港フラワーショー」が開催されました。今年はアジサイがテーマで約40万本もの花が展示され、園芸用品の販売、ワークショップやゲームもあり多くの人が訪れました。
亜熱帯の香港で桜や紅葉は見られませんが、日本とは違った南国独特の植物を見ることができます。香港のシンボルとして旗にもなっている「バウヒニア/Bauhinia/洋紫荊」は香港原産で、「香港蘭」とも言われます。1880年に香港で発見され、1965年に香港の花として選定されました。湾仔の金紫荊廣場(Golden Bauhinia Square)にある金色のバウヒニア像は、1997年に返還記念として中国政府から贈られたもので観光スポットとして有名です。香港原産の植物は他にもあり「ホンコンツバキ/ Camellia Hong Kong Ensis /香港紅山茶」という椿の一種、「ホンコンドウダン/ Enkianthus Quinqueflorus/子安満天星」は小さなベルのような可愛らしい花を咲かせるツツジの一種です。コンクリートジャングルで摩天楼の街と呼ばれる香港で植物に接する機会は少ないと思われがちですが、香港は意外と身近の至る所に大小さまざまな公園があり、子どもや老人の憩いの場、都会のオアシスとしての機能を果たしています。香港の40%は自然保護区となっており、郊外へ一歩出れば豊かな自然に触れることができます。
先日、ラマ島に原生する「沈香木(じんこうぼく)」を盗伐したとして中国本土籍の男女12人が逮捕されました。押収された沈香木は13株で、230万香港ドルに相当するということです。沈香木はお線香、薬用、香料など身近な用途に使われますが、沈香木であればどれでも香りを持っているというわけではありません。傷や虫、天候などによるダメージを受けた木が樹脂を分泌し、その樹脂の沈着した部分が乾燥したものを熱すると、非常に良い香りがします。沈香木の中でも最高級の「伽羅(きゃら)」は、乱獲されたことから現在はワシントン条約の希少品目第二種になっています。過剰な伐採による産出量の減少と、東南アジアを中心とした需要の高まりもあって沈香木は以前よりも高価で取引されており、自然保護区内でも沈香木の盗伐は後を絶たないのが現状です。東南アジアのいくつかの熱帯地方では沈香木の苗を植える活動が行われており生産量の回復を目指しています。
香港では「羅漢松(らかんまき)」も同様に盗伐すれば罪に問われます。羅漢松は松の木の一種で、盆栽のように鉢植えしたものが観賞用として人気がありますが、木材は建築や彫刻にも利用され非常に価値が高いものです。また中華圏において羅漢松は風水の良い縁起物としても重宝されており、「幸せを呼ぶ木」と言われ市場では高値で取引されています。羅漢松に限らず日本のマキも近年は中国、台湾、香港向けの輸出が増加していて1本1000万円~で取引されています。
さて、香港ではCBD(カンナビジオール/Cannabidiol)が今年2月1日より禁止となりました。近年よく耳にするCBDですが、痛みを和らげストレス軽減の効果が期待できる天然成分で食品や化粧品などに使われています。CBDは大麻草から抽出・製造されますが依存性は無く、欧米では医薬品として承認されており、日本でも大麻には該当しないと合法になっています。
香港では諸外国と同じように近年CBDブームが起きていたので、食品やサプリメントなど身近なショップや飲食店で入手できていました。世界的にCBDは人気が高まっていますが、中国では香港よりも早くから危険ドラッグとして分類され禁止されていました。香港でも禁止となった背景としては、CBD自体に依存性は無いとしても、大麻成分のTHC(テトラヒドロカンナビノール)を完全に除くことは難しいこと、またCBDに強酸を加えるとTHCに変換できることから、そういった業者や個人の出現を防ぐためとされています。香港でCBDを所持、消費した場合は7年の禁固刑と最高100万香港ドルの罰金が科されます。またCBDの製造、輸出入は終身刑になる可能性もありますので、日本を含む海外では生活の一部となっていても、香港にCBDを持ち込まないよう気を付けましょう。実際に日本でもCBD製品からTHCが検出されたケースもありますので、日本国内で取り扱われている製品の場合でも、できるだけ正しい製品情報を得ることが重要です。
他にも食品の安全に関心が高い香港では、香港消費者委員会などによって市販食品の安全性が度々チェックされ結果が公表されています。例えば発がん性物質が含まれていると指摘された製品の中には香港の大手メーカーのもの、日本人が長年親しんできた日本メーカーのものが含まれていて驚かされることがよくあります。ここ1、2年ほどでもクッキーやビスケット類、醤油などの調味料、生鮮肉や魚、インスタント麺などが調査され、基準値オーバーと指摘された製品が店頭から一時は姿を消しました。香港は食料の大半を輸入に頼っており、スーパーには日本を含む海外からの輸入食品が並んでいます。ほとんどの食品が日本のメーカーという日本国内のスーパーに比べると、香港は販売元の国、メーカーが様々で、価格帯も幅広いので選択肢が豊富にも見えますが、価格と品質のバランスは個人の生活水準や食に対する考え方に大きく委ねられています。