今年の香港は清明節が4月5日、イースター休暇が4月7日~10日で、休みの取り方によっては4月1日~10日まで10日間の連休となる人もいたようです。香港から海外へ出境した人はおよそ900万人で、日本にも多くの香港人をはじめとする外国人観光客が押し寄せコロナ禍前の活気が戻りつつありました。観光業、航空業界、宿泊業、飲食業など人材を削減していた業種は、急激な需要回復により深刻な人手不足が浮き彫りとなりました。今後は人員確保と同時に、デジタルを活用したマンパワーに頼らないシステム構築など新たな試みも生まれています。
現時点で、日本の入国にはまだ制限があり、ワクチンを3回以上接種した証明書か、渡航先の国で72時間以内に受けたPCR検査の陰性証明書の提示が必要です。しかしGW後の5月8日(月)より、日本で新型コロナウイルスは感染症法上5類扱いになり、接種証明書や陰性証明書は不要となります。5月8日以降も中国本土からの直行便で日本に入国する場合は、ワクチン接種証明と陰性証明書の提出が引き続き義務づけられます。
さて、世界の各地がここ3年で落ち込んだ観光業を盛り返そうと精力的に活動していますが、マカオ観光局は片道無料キャンペーン「Macao Treat」の第2弾を開催します。第1弾は、1月13日~3月31日の期間中に香港居民を対象に香港~マカオ間の往復にかかる一部交通機関の運賃を無料にするというものでした。これに続いて第2弾の4月10日~6月30日は香港居民のみならず台湾、海外からの観光客も対象となります。交通機関は高速船と、港珠澳大橋経由のクロスボーダーバスで、いずれも同日の利用(日帰り)は対象外のため、マカオのホテル等で宿泊する必要があります。香港からマカオへ足を延ばしてみるには絶好の機会ですね。マカオにはマカオパタカ(MOP)という通貨があります。香港から行く場合、1パタカ=1香港ドルで、ほぼマカオ内のどこでも香港ドルが使用できますので香港ドルをわざわざ両替する必要もありません。厳密には1MOP=0.97HKDなので、香港ドルの方が少し高いのですが、観光で行くなら両替も不要な香港ドルが便利です。
さて、香港ドルは1ドル=7.75-7.85香港ドルの許容範囲とするドルペッグ制(固定相場制)を採用しています。4月上旬、ドル買いが進み上限1ドル=7.85香港ドルを突破し香港金融管理局は市場介入を実施しました。国際金融都市、国際貿易港の香港にとって、貿易や投資取引には米ドル建てが多いため、ドルペッグによって対米ドルの為替リスクを回避し、香港の通貨・金融は安定を保ってきました。
香港がドルペッグ制を導入したのは、1983年に香港ドル対米ドルの相場が大暴落した通貨危機の頃に遡ります。当時1米ドル=9.6香港ドルを記録したといいます。背景には1982年から始まった香港返還交渉で、1997年の香港返還がいよいよ具体的になってくると香港内で将来に対する不安が高まり、1年後の暴落に繋がったと言われます。その混乱への対応として施行されたのが1983年の米ドルに対するペッグ制(1米ドル=7.8香港ドル)です。固定相場制で、その後2005年5月からは目標相場圏として1米ドル=7.75~7.85香港ドルの間で変動することになりました。なぜイギリスポンドとのペッグ制ではないのかというと、施行当時の香港にとってアメリカが最大の貿易相手国だったからです。
香港における米ドルペッグ制は、カレンシーボード制(Currency Board)です。流通する自国通貨と同じだけの米ドルを中央銀行が保有するというもので、この米ドルの裏付けによって、自国通貨の信用を保証するという政策です。香港の場合は中央銀行ではなく、銀行券の発券を行う民間銀行(香港上海銀行、スタンダード・チャータード銀行、中国銀行)がその役割をします。ドルペッグ制によって対ドルの為替相場は安定しますが、否応なしにアメリカの金融政策と連動することになります。アメリカが利上げすれば香港内の景気に関わらず利上げし、通貨価値を維持しなければなりません。こういったデメリットもあるため、香港が今後も米ドルペッグ制を維持し続けるのかは誰にもわかりませんが、現時点では中央政府もドルペッグ制を香港のメリットとして見ているようです。そして米ドルと香港ドルの為替の動きは連動しているため、2023年4月現在、米ドルに対し円安ですが、同じように香港ドルに対しても円安となっています。
利上げに関して、身近なところでは銀行の定期預金の金利が挙げられます。定期預金は投資に比べると大きなリターンは見込めませんが元本割れすることが無く安定性があります。現在、香港の主要銀行の定期預金の金利は非常に魅力的で、少額預金の場合は 3.6% から、最大3.8%という利率の良さです。日本ではバブル期をピークに、以来ずっと超低金利でメガバンクの定期預金の金利は0.001%というのが当たり前になっていますが、香港なら10万香港ドルを預ければ金利が3600香港ドルということで定期預金が非常にお得になっています。香港の主要銀行が出している定期預金の利率は期間や条件などがそれぞれ細かく異なっていますので、口座を持っている銀行はもちろん、他の銀行の利率も見て比較してみると良いでしょう。