香港のEV化事情

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香港のEV化事情

香港では来年(2024年)の1月〜3月、観塘~九龍間で香港初の電気ミニバス(電動小巴)の運行が開始されます。電気ミニバスの試験運行にはサプライヤー6社が参加しており、香港政府はミニバスの価格138万香港ドル〜228万香港ドルの範囲で、その80%を補助する予定をしています。そして今回のミニバスよりも一足先に、今年7月から九龍バス(KMB)も2階建ての電気バスの運行を開始しています。着々と進む香港内のEV化について見てみましょう。

温室効果ガスの排出量を削減するため、世界的にEV化の動きが進む中、香港も積極的にカーボンニュートラル(二酸化炭素(CO2)排出量ゼロ)を進めています。香港政府は2021年10月に「香港気候変動行動計画2050」を公表し、「二酸化炭素(CO2)排出量ゼロ、居住に適した都市、持続可能な発展」という3つのビジョンを設定しました。他の先進国同様に、香港も2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにするという目標達成を目指しています。政府が2400億香港ドルの予算を投じていることからも、いかに香港がこのプランを真剣に考えているかが伺えます。公共交通機関における電気車両の導入を促進するため政府からは補助金の支給、充電スタンドの拡充、試験走行の実施などが計画されました。この先2027年末までには700台の電気バス、3000台の電気タクシーを導入する計画です。

さらに香港政府は2035年までに自家用ガソリン車やハイブリッド車の新車登録を廃止する計画で、電気自動車への移行を促進するため「一対一交換」(一換一/One-for-One Replacement)の税制優遇措置を実施しており、最大287,500香港ドルの優遇が受けられます。香港政府は下記を通じて電気自動車の利用を推奨しています。

・充電施設:民間・公共住宅や駐車場への充電施設建設を促進・補助。

・自家用車:電気自動車の初回登録税、車両登録費用の優遇。公共駐車場での無料充電。

・商用車(公共交通機関):初回の登録税、法人税を全額免除。新エネルギー運輸基金(New Energy Transport Fund)から補助金を交付。

「一対一交換」(一換一/One-for-One Replacement)スキームは2024年3月31日までで一旦終了の予定となっており、この期間内に自家用車のスクラップ及び登録の取消を行い、さらに同一名義で新たに電気自家用車を初回登録すれば、287,500香港ドルを上限に税金控除の優遇を受けられるというものです。このスキームを利用するには過去の車両登録から今回の取消まで6年以上経過していることが申請の要件となっています。企業が設備投資として電気自動車を購入した場合、初年度の企業所得税から控除を受けられます。

香港の街の象徴とも言える2階建てバスはどうでしょう。香港で路線バスの運行が始まった当初は1階建てのバスでしたが、第二次世界大戦後、中華民国内での内乱で難民が増え、中国本土から香港へ移住してくる人が急増したことから、膨れ上がった公共交通機関の利用者に対応する形で2階建てバスの導入が始まりました。現在も地下鉄の路線が増えたとはいえ、香港内を縦横無尽に走るバスは市民の主要な交通手段です。バスは二酸化炭素を多く排出するので、電気車両の導入による二酸化炭素排出量の軽減効果は大いに期待できるしょう。7月より電気バスの運行を開始しているKMB社は中国バッテリー電気自動車の大手、比亜迪(BYD)製の2階建てバスを導入しました。薄型電池を搭載し、1回約2時間の充電で300kmの走行が可能です。さらにバスの天井にソーラーパネルを取付け、電力はバス内のLED照明や座席のUSBポートに使われます。

タクシーについてもEV化が進んでいます。香港がイギリス領だったことから香港では当初、イギリス産車両がタクシーとして使われていました。1970年代ごろから日本車が徐々に増え始めトヨタのクラウン、日産のセドリックなどがタクシー車両として導入されました。1997年の香港返還時には、タクシー車両のシェアはほぼトヨタのクラウンコンフォートなどコンフォート系が大半を占めていましたが、コンフォートが生産終了となると、その後続車として2018年から香港向けに発表されたのがトヨタの「JPN TAXI/ジャパンタクシー」です。ユニバーサルデザインタクシー用トールワゴン型ハイブリッド商用車、世界初のLPGハイブリッド車で香港での車名は「コンフォートハイブリッド」とされました。コンフォートハイブリッドへの乗り換えは着々と進んでいるので、香港内で見かけることも多くなっていますが、韓国や中国メーカーのEV車も負けてはいないので、今後のシェア争いが気になるところです。

香港は経済的に発展した国際都市で、様々な人種が集まる混沌とした社会です。これまで利便性を重視する一方で、環境への取り組みに関しては消極的な印象がありました。しかし地球温暖化による気候変動が身近に感じられるようになってきた今、このまま従来と同じような経済活動を続けていくと地球規模で取り返しのつかない事態になってしまいます。環境先進国はフィンランドなど欧州諸国がリードしており、アジアはまだ環境への関心が低いと言えます。香港も個人の意識改革から、エコでクリーンな街づくりを目指し、国際社会における香港の魅力アップにつなげましょう。