ムスリムフレンドリー都市
イスラム教徒(ムスリム)向け観光地としての魅力を調査した2026年版「グローバル・ムスリム・トラベル指数(GMTI)」が6月18日にシンガポールで発表されました。香港はムスリムフレンドリーな観光地としてイスラム協力機構(OIC)非加盟国・地域中2位となり、前年から2年連続で順位を上げました。他にも「ムスリムフレンドリーでアクセシビリティーに配慮した観光地」において2年連続で首位を獲得、「ムスリム女性にフレンドリーな観光地」で2位を維持するなど、世界的な評価を高めています。さらに、観光関連施設でも高い評価を獲得しました。オーシャンパーク(香港海洋公園)は観光スポット部門、ドーセット・ツェンワン(香港荃灣帝盛酒店)はホテル部門、啓徳クルーズターミナルは交通拠点部門で「ムスリムフレンドリー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。香港政府観光局が東南アジアのムスリム市場向けに展開したプロモーション「ジェラジャ・ホンコン」もマーケティング部門で表彰され、香港が戦略的にムスリム観光市場へ取り組んでいることが伺えます。近年、香港はムスリム旅行者にとってますます魅力的な旅行先として注目されています。
こうした成果は、決して一朝一夕に築かれたものではありません。香港とムスリムの関係は19世紀のイギリス統治時代にまで遡ります。当時、インドや現在のパキスタン、バングラデシュから多くのイスラム教徒が軍人や警察官、商人として香港へ渡り、地域社会の発展に貢献しました。現在も尖沙咀に建つ九龍モスクは香港最大級のモスクとして、多くの信者や旅行者が訪れる歴史的なランドマークとなっています。現在の香港には南アジア系住民だけでなく、東南アジアから働きに来ている人々や金融・物流分野で活躍するムスリム、そして世界中から訪れる観光客など、多様なイスラムコミュニティが暮らしています。そのため、ハラール認証を受けたレストランや礼拝スペースの整備が進み、ホテルやショッピングモールでもムスリム旅行者への対応は年々充実しています。
近年は東南アジア、中東からの旅行需要が拡大しており、香港は誰もが安心して旅行できる国際都市を目指すための取り組みをしています。ハラールグルメや礼拝施設だけでなく、多文化を尊重する街づくりそのものが高く評価され、世界のムスリム旅行者から選ばれています。香港はもともと東洋と西洋が交わる街として知られていますが、これからは多様な宗教や文化を受け入れる都市としても、その存在感をさらに高めていくでしょう。
若年層を守る香港政府のドラッグ対策
近年、香港では電子タバコ(Vape)を悪用した新型薬物「エトミデート(宇宙油)」が若年層の間で急激に普及し、大きな社会問題となっています。その対策として香港政府や治安当局は従来の啓発から脱却し、若者カルチャーに踏み込んだ斬新なキャンペーンを展開しました。
2026年6月26日は「国際麻薬乱用・不正取引防止デー」でした。それに合わせ、香港懲教署(CSD)が発表した最新の啓発動画「Obsession /糖衣陥阱(甘い罠)」は、大きな話題となりました。この動画にはAI技術で生成された仮想のK-POP風ガールズグループが登場しており、華やかな衣装をまとった4人の美女は、現代の若者が直面する4つの違法薬物(エトミデート、大麻、コカイン、メタンフェタミン)を擬人化させた架空のキャラクターです。動画の前半では、ダンスミュージックに乗せて4人が薬物の魅力を華やかに歌い上げます。しかし後半に入ると一転、彼女たちの姿は醜い風貌の中年男性に変わると同時に監獄に入れられ、見た目の甘さに騙されて陥った薬物の罠に、心身が破壊されるという残酷な現実が描かれています。この動画は公開するや否や、前半35秒で歌われる「魂が抜けるほど気持ちいい」「宇宙へ連れて行ってくれる」などの描写が薬物のプロモーションとも捉えかねない表現で、逆効果になっていると批判の声が上がりました。当局は迅速に内容を修正しましたが、最終的に修正版も削除されました。一騒動ありましたが、従来のような「薬物は体を蝕む」「監獄に入り人生を棒に振る」「泣き崩れる親」などの暗い描写よりも、強いインパクトを狙った斬新なアプローチだったといえます。若者への浸透を図る手段はAIだけに留まらず、香港政府の保安局禁毒処(NDO)は、香港を代表するトップスターである郭富城(アーロン・クオック)氏を「名誉禁毒大使」に任命しました。彼が考案した「アンチドラッグ・ダンス」は、各種SNSを通じて拡散され、若者だけでなく多くの著名人や市民がダンスに挑戦することによって啓発が広がっています。
スマートフォンの普及や密輸ルートの巧妙化により、若者たちが「お試し無料」「DM限定」「楽に稼げる」などの甘い言葉に乗せられ知らず知らずのうちに薬物の危険に晒されるリスクは、かつてないほど高まっています。薬物の脅威から次世代を守るため、最新のテクノロジーとエンターテインメントを駆使して対抗する香港の取り組みは、これからの時代の啓発活動において新しい試みと言えるでしょう。