香港では12月20日午前、台風警報シグナル1が発令されました。フィリピンで甚大な被害をもたらした台風22号(雷伊)の接近で、台風の勢力は弱まっていたため被害はありませんでしたが、12月に台風警報が発令されるのは47年ぶりとも報道されました。また、気温も10度を下回る日があるなど、旧正月に向けて香港の冬は思いのほか寒くなります。香港では室内を積極的に温めることはなく、換気を兼ねて年中クーラーをきかせています。一般的な日本の冬のように窓を閉め切って暖房をきかせると、香港人は息苦しく感じるようです。そのため冬でも暖房はせず、室内にいても外とさほど変わらないような厚着をして過ごす人が見られます。
さて、この2021年は昨年に比べればウィズコロナが日常に定着した一年だったと思います。香港では「ゼロコロナ」政策が功を奏しており市中感染は低く抑えられています。当面は中国本土との往来再開が最優先で、世界との往来再開は2022年中に実現するかどうかといったところでしょう。香港在住日本人の日本への一時帰国も、隔離措置があるため長らく帰省されていない方が多くいらっしゃいます。これまで日本に帰省すると親族や友人に会うことはもちろん、日本の歯科へかかっていた人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
香港の医療事情は過去に取り上げたように日本と違って医療費の100%自己負担を基本とします。必要に応じて自分で医療保険に入るか、会社で医療保険に加入します。そして病院も公立と私立があり、医療費やサービスの内容に違いがありますので保険の有無、加入している保険の内容に応じて病院も選ぶことになります。日本からの駐在員の場合は一般的に海外駐在保険に加入しているケースが多いと思いますが、特約が無い限りほとんどのプランで妊娠・出産・歯科疾病に関しては補償対象となっていません。そのためこれまで香港在住の日本人は年に何回かの帰省や出張に合わせて日本で歯科治療を受けていたと思います。香港で歯科治療を受ける場合を想定して、香港の歯科事情を紹介しましょう。
香港の歯科医療水準
一般の医療と同じく、香港でも先進国同様の医療技術が期待できます。香港で歯科医師免許を取得するには香港大学の歯学部を卒業する必要があり、歯科医師のレベルの高さが分かります。いくら歯科医のレベルが高くても、初めて香港の歯科医を受診する際は不安になるかもしれませんが、香港には日本語が話せる歯科医や、日本人の通訳が常駐する歯科医などもいて安心です。英語や広東語など、語学に十分な自信がある人であっても、歯科の専門用語や治療方針などを相談する際にはやはり表現が難しいので、最初は日本語が通じるクリニックを訪ねてみることをお勧めします。
治療の流れ
医療費の負担が実費で、また治療に関わる医療費が高額になることから、通常まずは予診をした後で治療方法や処置、それに使用する材料の種類を歯科医と相談します。例えば予診のためにレントゲンを撮ることも費用がかかりますので、レントゲン撮影前にはきちんと金額の説明があります。かぶせ物なら銀やセラミックなど材質を予算や好みに応じて自分で選ぶことができます。治療にかかる費用はクリニックによってどこも違いますので、治療内容や金額の説明があり、納得した上で治療に進みます。もし納得できない場合や不安がある場合は、無理に治療まで進める必要はありませんのでよく考えて後日改めて受診しても良いですし、別のクリニックを検討しても何ら問題ありません。また、治療にかかる通院回数も日本に比べると少なく、なるべく少ない受診回数で治療を完了してくれます。
香港人の歯の健康管理
いくら医療費が高いからといっても、急な歯痛などではやはり歯科医を頼るしかありません。もし緊急でなければ、日本人は帰国の際に日本で歯科治療を受ける選択肢もありますが、香港人の場合はどうでしょうか。普通の風邪であれば民間のクリニックを受診すれば数百ドルですし、入院を要する病気の場合には公立病院という選択肢もあります。公立病院の入院費用は大部屋で1日100香港ドル~なので、医療費が100%自己負担とはいえ家庭の経済状況に合わせて負担を軽減させる選択肢があります。しかし歯科医療においては、民間のクリニックでも1回の治療で数千ドル~のため、どうしても負担になってしまいます。そのためか、多くの香港人は歯のクリーニングを定期的に受けに行っており、虫歯予防に重点を置いています。歯のクリーニングは大体500香港ドル~で、歯を健康に保つために定期的に受診していると、初期虫歯の発見にも繋がって早期治療をすることができます。また、香港の水道水はフッ素を含んでいますので日本のようにわざわざフッ素を塗布してもらわなくても、毎日フッ素を含んだ水道水で歯磨きをしているだけで虫歯予防にもなります。これもまた香港人の歯の健康の秘訣といえそうです。