旧正月と多国籍都市・香港

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旧正月と多国籍都市・香港

2023年の旧正月は1月22日が元旦でした。今年の干支は癸卯(みずのと・う)です。

陰陽五行説では、癸が水の陰のエネルギー、卯が木の陰のエネルギーを表しています。

「癸」は雨や露、霧など恵みの水を意味し、生命の終わりと新たな生命が成長し始めている状態を表しています。そして「卯」は安全、温和を意味し、うさぎのように飛躍するという意味から何かを始めるには吉の年です。景気の回復など好転すると言われています。新型コロナウィルスの流行から3年、徐々に海外との行き来も可能になり、フライト数も戻ってきました。リモートワークの普及など新たな生活様式の選択肢が増え、コロナ禍によって得られたものもあります。健康を維持し、お金が儲かる一年になりますように。

新年には是非、街角や書店で売られている風水の暦「通勝」を手に取ってみましょう。香港人なら一家に一冊は必ずある「通勝」には、毎日の運勢や開運のすすめが書いてあります。古い表現で書かれているため、香港人でも若い人には少々読み解くのが難しく、せいぜい結婚式の日取りを決める時くらいしか出番がないかもしれません。それでも「通勝」は持ち歩いているだけでもお守りになるという意味から、ポケット版も売られています。

また、新年には伝統芸能の獅子舞(ライオンダンス)をあちこちで見ることができます。獅子舞は「舞獅」「舞龍」「醒獅」とも呼ばれ、新年に無病息災、五穀豊穣を願って行われます。一口に獅子舞といっても広大な中国では様々な形態があり、香港で見られるのは南方獅子です。南方獅子は広東省が発祥で、獅子の特徴は色鮮やかで、中国武術とも関係が深いとされます。対する北方獅子は、身体は金色で頭には赤い毛があり、玉乗りなどアクロバティックな動きも多く雑技として有名です。香港の獅子舞は一般的に前後に2人が入り、前足と後足が表現されています。太鼓など派手なリズムに合わせ、元気よく動く姿は中で人が操っていることを忘れるほど迫力があり、愛くるしい表情を見せてくれます。旧正月以外にも、新しいお店の開店祝いや催事などでも見ることができます。店先やマンションの入り口などにレタスと祝儀袋の「利是」が吊るしてあり、獅子がこれを踊りながら食べて吐き出すことを「採青」と言います。「採青」をしてもらったお店やその人たちには「百福臨門」といって多くの福がやってくると言われています。

また2023年は兎年ですが、ベトナムでは猫年となります。ベトナムの十二支は他にも牛が「水牛」、羊が「ヤギ」、猪が「ブタ」となります。ベトナム以外でも国や民族によってはワニ、蜂、亀、豹、鹿、カタツムリ、ラクダなどが入っているところもあります。十二支の発祥が中国と言われているので、元々はブタのところを日本も独自にイノシシを充てたということになりますね。

香港は多文化、他民族国家です。香港は全人口の約95%が中華系で、その他フィリピン、インドネシアなど様々な国籍の人が住んでいます。香港は海外からの移住者が仕事を探して定住する環境が整っており、日本の地方にいる外国人のように孤独を味わうこともなく、香港ではどんな国から来た人でも同胞と助け合いながら暮らすことができます。香港在住日本人の数はかつて2万6千人ほどいた2016年頃に比べると現在は1万人ほどですが、在留邦人同士の繋がりは異国の地で暮らす上で心強いものでしょう。

日本人が多く居住している区域は古くから太古城が有名ですが、西湾河、紅磡も日系スーパーや日系幼稚園、日本人学校が近くにあるため人気があります。九龍駅周辺も出張が多い方には便利です。香港の中には、特に外国人が集中しているエリアがいくつかあります。

尖沙咀の金巴利道(Kimberley Road)は、いわゆるコリアンストリートで韓国レストランや韓国食材店が林立しています。世界的に韓国ドラマや韓国の芸能人が人気ですが、香港にいながらにして韓国の気分が味わえます。

九龍城は、タイ人街として有名ですね。以前はバスを利用してアクセスしていた九龍城ですが、新しくできた宋皇臺駅のおかげでより便利になりました。コロナによりお店の閉店が相次ぎ、前に比べてタイの雰囲気が失われつつあると懸念されていますが、再開発と共に盛り返して欲しいです。

セントラル駅のすぐ真上には環球商場(World Wide Plaza)というビルがあり、中のお店はフィリピン一色で、香港に住むフィリピン人の拠り所となっています。同じように九龍側には、黃埔108商場というビルがあり、そちらもフィリピン食材などのお店がたくさん入っています。

銅鑼湾の糖街(Sugar Street)は、日曜日になるとインドネシア人でごった返しています。この通りにはインドネシア料理のお店、食材店、雑貨店などが密集しています。レストランのメニューにはインドネシア語しかないこともあります。

尖沙咀にある重慶マンションはインド人、インド料理店で有名ですが、中東やアフリカ系の人にとっても大切なコミュニティとなっています。アフリカからは中古品を買い付けに来ている人が多く、中国ビジネスの中継地となっています。

「人種のるつぼ」と呼ばれ多くの外国人が暮らす香港ですが、香港人はそれらと一線を画して生活をしています。お互いの文化が混ざり合うことはありませんが、うまく共存していると言えます。