<人口世界一はインド>
国連は4月19日、インドの人口が中国を抜いて2023年半ばには世界最多になるというデータを公表しました。統計によるとインドの人口は14億2860万人を超えており、中国(香港とマカオは含まず)の14億2570万人を上回るということです。インドは中国、日本に次いでアジア3位の経済大国で、人口の約半分が30歳未満です。医療水準も改善されたインドは、今後も経済成長と共に人口増加が続く傾向にあり、2050年までに人口は16億人を超えると見込まれています。
中国は、少子高齢化により60年振りの人口減に転じました。2022年の14億3000万人をピークに今後は人口減少が始まるとされ、2050年には13億2000万人ほどになるという予測です。現在の人口統計で第3位はアメリカ合衆国で3億4000万人、日本は12位で1億2330万人となっています。世界全体の人口がおよそ80億4500万人であり、インドと中国だけでその3分の1を占めています。
日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに、以後減少しています。2025年には団塊の世代の方々が75歳以上となり、日本の人口の18%を75歳以上が占めることになります。そして2056年には1億人を割り、2070年には9000万人を割ると予想されています。人口の減少によって人手不足は深刻となり、今後は人材確保のため外国人の受け入れも積極的に進めていくことが課題となっていますが、前提として外国人にとって賃金や労働環境が母国や他の国よりも魅力的である必要があります。現在の日本が受け入れを進めているアジアの新興国からの外国人たちも、母国の経済発展や賃金水準の上昇により日本で稼ぐメリットが薄れると、そのうち母国を出る必要性がなくなってくるかもしれません。
<香港の人口減少>
香港は2022年末の人口が733万人と発表され、同時に前年に比べ6万人の減少し、3年連続の減少となりました。香港の人口は2020年を境に減少し始めています。減少の主な要因としては人口の海外流出と出生率の低下が目立っています。
人口流出については、この3年はコロナ禍もあり一時的な海外への移動なのか、海外移住したのかはっきりした統計はありません。香港は従来、植民地だったという独特の土地柄から海外移住は身近なもので、特に最近は子育て中の家庭は教育環境を重視して海外を選択する傾向が強いようです。香港政府は労働人口の確保のため、新たなビザ発給など様々な政策で人材獲得を目指しています。
出生率の低下については、今の日本でも非常に深刻な課題となっていますが、日本の場合は主な原因として、非婚、晩婚、晩産、非正規雇用の増加による若年者の経済的不安定、不妊治療の経済的負担、等々が挙げられます。出生率の分析をするとき、出生率の向上こそが正しいと思いがちですが、もう一つの要因として価値観の多様化もあり、近年は結婚することや出産することが必ずしもあるべき姿ではないと考える人も多くなっています。
日本の独特な社会背景と違って、香港はもともと共働き文化で、両親やアマさんなどを頼って子育てがしやすい環境のように思えますが、それでも出生率の低下は急速に起きています。香港でも未婚、晩婚は増加していますが結婚しても子どもを持たないという夫婦が多く、香港で顕著な理由として教育費用、住宅価格など経済的負担の懸念があります。世界の学力ランキングで香港はトップクラスですが、香港では1人の子どもにかかる教育費用は100万香港ドル(今の17.3円で換算すると約1730万円)とも言われ世界でトップです。子を持つことで経済的な負担が増えるより自分のライフスタイルの充実を重視する傾向が強くなっています。
<香港の高齢化>
世界的に高齢化が進んでいますが、香港も高齢化社会です。香港の平均寿命は85歳、2位の日本の84歳を抜いて世界一です。男女で比べると女性が87歳、男性が82歳です。香港もMPFという制度がありますが、始まったのが2000年でまだ歴史は浅く、日本の年金のように終身受給できるものではなく定年時に一括で受け取る、いわば退職金のため実際は多くの高齢者の生活費は子の収入が支えています。今の高齢者たちは子どもの数が多いので、子どもたちで両親の生活を支えることができていますが、子どもが1人いるかいないかの現役世代が定年した時、同じように家族間で生活を支えることは今より難しくなるでしょう。医療費も、香港は高い医療費を負担するか公立病院で長時間待たされるかの2択のため、家庭の経済状況によっては思い通りの医療が受けられないケースが出て来るかもしれません。
しかし日本に比べると香港の高齢者は社会でも非常に大切にされています。同居している家庭も多く、別々に住んでいても香港内のため週末には子や孫も勢ぞろいで飲茶を楽しむ姿があちこちで見られます。アマさんを雇って介護の一切を任せることもできるので、働き盛りの現役世代は外で仕事が続けられます。
人口構造の変化によって生じる今後の問題について、解決策は一通りではありません。それぞれの国や地域で、社会で助け合えるような枠組みを柔軟に考えていく時期になっていると言えるでしょう。