香港オクトパスカードと地下鉄(MTR)の歴史

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香港オクトパスカードと地下鉄(MTR)の歴史

香港での生活に必要不可欠なオクトパスカード(八達通)がさらに便利になります。オクトパスカード社は、中国本土320都市の公共交通機関で使用することができる新しいオクトパスカードを3月末までに発売すると発表しました。新しいオクトパスカードは香港の地下鉄(MTR)の各駅で購入することができ、香港ドルでチャージして、香港内だけでなく中国本土でも使用できるようになります。中国での利用分は自動で人民元に換算され引き落とされます。

今でこそ日本でも電子決済、交通系ICカードは日常生活の一部になっていますが、香港がオクトパスカードを導入したのは、なんと香港返還後すぐの1997年9月でした。ソニーが1988年に開発を開始した非接触型ICカード規格「Felica」を、世界で初めて採用したのです。

オクトパスカードの登場により細かい小銭を用意する必要がなくなりました。オクトパスカードで支払う方が、現金で乗車切符を買うよりも割引になることもあります。香港内の地下鉄(MTR)はもちろん、バス、ミニバス、香港島のトラム、ピークトラム、元朗などを走るライトレール、各種フェリー、ゴンピン360°のケーブルカーなど、香港にあるほとんどの交通機関で利用できます。そして電子マネーとしてもコンビニ、飲食店、自販機など、あらゆる場所で決済ができます。オクトパスカードには認証の用途もあり、オフィスやマンションのセキュリティキーとして、あるいは学校での出席記録、会社での出社記録としても使われています。オクトパスカードには子ども、成人、高齢者の3種類がありますが、他にパーソナライズドカードという個人情報が入るカードもあり、名前、必要であれば写真が印刷されます。年齢情報が記録されており学生カードとすることもできます。

さて、公共交通機関が発達している香港は移動手段が豊富で魅力的です。香港の面積は約1,100平方kmで東京都のおよそ半分ほどの大きさですが、その面積の多くは山地が占めているため、人口およそ730万人が市街地に密集しています。そのため香港は世界的に人口密度が非常に高い都市として知られています。そんな市民の重要な足となっている公共交通機関の歴史を辿ってみましょう。

<地下鉄(MTR)>

香港の地下鉄(MTR)は1979年10月、観塘線の観塘駅~石硤尾駅間から開通しました。香港が返還された1997年の頃には、現在もMTRのメイン路線とも言える緑の「觀塘線」、赤の「荃灣線」、青の「港島線」の3ルートはすでに開通していました。MTRは2000年に民営化、2007年にKCRと合併しました。現在は東涌線、将軍澳線、迪士尼線、南港島線も合わせ7ルートあります。東涌線は1998年の新香港国際空港の開業に合わせ開通、エアポートエクスプレスも同じ路線です。将軍澳線は2002年8月に開通し香港島と九龍半島を結ぶ2本目の路線となりました。迪士尼線は2005年の香港ディズニーランド開業に合わせ開通しました。そして香港島南部の開発も進み、2016年末には南港島線の東側が開通しました。

MTRと合併前したKCRはさらに歴史は長く、九廣鐡路(KCR)は、その名の通り香港の九龍と中国の広州を結んでいた鉄道路線です。1910年10月開業しました。尖沙咀のプロムナードに今も残されている時計塔は、当初KCRの香港側の発着駅であった尖沙咀駅が、1975年にホンハム駅に移されるため取り壊された際、保護団体と協議の末に唯一保存されたものです。かつて九龍~広州は直通でしたが、1949年に中華人民共和国が設立し、国境が出来たため香港側はホンハム~羅湖、中国側は深セン~広州に分かれました。その後、1979年に直通運転が再開され、香港~広州、上海、北京までが直通となりました。さらにKCRは1988年より軽便鐡路(ライトレール)を開業しました。従来の路線を九広東鐡とするのに対し、2003年に九広西鐡、2004年に九広馬鐡、というようにKCRは主に郊外路線を開発しました。そして経営効率化のため2007年12月、MTRによりKCRが吸収合併され現在に至ります。

<路面電車(トラム)>

1904年に開業した香港島の路面電車(トラム)は、香港島の市街地を東西に結ぶ重要な交通機関で現在もなお現役で活躍しています。2階建て車両には様々なラッピング広告が施され、人々の目を楽しませます。開業当初は1階建てでしたが1912年より2階建て車両が登場しました。1949年製のレトロな緑色の120号車両、臙脂色で2階がオープンデッキとなって電飾が付いている68号車両は、貸切が可能でイベントやパーティに利用することができます。トラムは市民の足であると共に観光客からの人気も高い乗り物です。

<ピークトラム>

百万ドルの夜景を見にビクトリアピークへ登る際に欠かせないピークトラムは、1888年開業でトラムよりも長い歴史があります。高級住宅地として知られているピークですが、まだそれほど人が住んでいない時代、スコットランド人の実業家により住宅地開発のためにピークトラムが導入されました。当初は蒸気機関で、1926年から電動式に変わります。現在のピークトラムは第六世代の車両で、従来の定員120人から210人に増加しました。いつの時代も最新の技術を用いて改良されながら、歴史が紡がれていきます。