香港の出生率の低下

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香港の出生率の低下

物価高が続く中、MTRが乗車料金の改定を発表しました。新料金は6月30日より適用されます。7月中はお得なキャンペーンが用意されており、「乗車10回につき1回無料」となるため、オクトパスを利用する一般客(大人)は、7月1日~28日までの間、改札を10回通過するごとに1回の乗車料金が無料になります。ただしエアポートエクスプレス、ライトレール、MTRバス、羅湖駅、落馬洲駅、などは対象外で、一人につき最大4回まで割引が適用されることとなっています。

さて、日本では6月5日に厚生労働省が昨年(2023年)の人口動態統計を公表しました。統計によりますと女性が一生のうちに産む子供の数は1.2人で、これは統計開始以来最も低い数字でした。さらに8年連続で前年の数字を下回っており出生率の低下に歯止めがかかっていない状況です。都道府県別にみると、東京都が最も低く0.99人で、ついに1人を割りました。出生率が最も高いのは沖縄県で1.6人、2位は長崎県と宮崎県で1.49人、4位が鹿児島県で1.48人、5位が熊本県で1.47人と南九州地方の出生率が比較的高い結果となっています。日本全体で見ると、昨年生まれた子どもの数は72万7277人で、これも統計開始以来最も少ない数字となりました。結婚件数は戦後最少の47万4717組でした。未婚、晩婚が珍しくない今、婚姻数はますます落ち込んでいます。少子化は深刻な問題ですが、非正規雇用による経済的要因、女性のキャリアアップに伴う結婚への躊躇、家事と育児の両立の難しさなど、少子化には様々な要因が絡んでいます。日本の人口は2028年には1億2千人を下回ると予想されています。

世界の出生率ランキングを見てみると、上位10位まではアフリカの国々が占めています。

日本は212位、マカオが222位、香港は223位でした。そしてワースト1は台湾、ワースト2は韓国、ワースト3がシンガポールで、日本に限らず、少子化はアジア全体に見られる傾向と言えるでしょう。

ランキングが示す通り日本よりも香港の少子化の方がさらに深刻です。香港の場合はもともと夫婦共働きが普通で、家事や子育てはヘルパーさんを雇う習慣があり、狭い土地柄、近くに住む祖父母に頼ることもできるので一見日本よりも家事や子育ての負担が軽くなるように見えます。しかし一方で香港の場合は不動産の高さゆえ、家賃や住宅ローンの負担が大きく、その上で出産費用、その後の学費や習い事代を考えると、とにかく経済的不安が先に立ってしまいます。これでは結婚や出産に踏み切れない人が出てくるのも自然なことでしょう。香港は学歴社会ということもあり、子を産む以上は立派な教養を身に付けさせたいという思いも強く、経済的に十分な環境が与えられないのならむしろ産まない方が良いという考えに至ります。

それでは香港人は独身者が多いのかと言えば、結婚という制度にとらわれず同居(同棲)しているカップルは多くいます。また、結婚して夫婦になっても子どもを持たない夫婦は全体の40%以上で、子どもがいるとしても1人という夫婦がほとんどです。兄弟が2人、3人もいる家庭は、今ではかなり少なくなりました。

ただ日本と違って香港の場合、この状況が香港の人口減少に直結するわけではありません。

2023年の香港の人口は750万人超と、前年よりも0.4%増加しています。もともと海外からの移民が多い土地柄、たとえ地元民である香港人自体の人口が減っても、海外や本土からの移民が絶えず流入してくるので、日本のように出生率の低下がたちまち人口減少には発展しません。コロナ禍では一時的に人口減少も見られましたが、2023年は海外に住む香港人たちの帰国や、優秀人材の積極的受け入れ制度の効果により、香港への入境数はむしろ跳ね上がりました。

中国本土はどうでしょうか。中国は世界における人口の多い国ランキングの第1位を長年守ってきましたが、2023年にインドに抜かれ第2位となりました。2023年末の総人口は14億967万人で、前年度よりも208万人も少ない結果でした。中国は増え続ける人口の抑制のため長年続けていた「一人っ子政策」を2016年に撤廃し、人口増へ方針転換しています。出産人数に制限がなくなったとはいえ、急に長年の認識を変えることは難しく、香港同様に教育熱が高いため、子供は数より質という考えから今でも出産を控える傾向がみられます。2050年には中国の人口は13億人へ減るのではと言われています。 出生率0.87と世界ワースト1であった台湾は、2023年時点で約7万人の人口が減っています。台湾の出生率低下の原因は、やはり住宅費用と教育の高さがネックになっており、結婚しても子供を諦める夫婦が少なくありません。また台湾は伝統的な考えから結婚により女性は嫁としての立場が求められ、女性は結婚によるデメリットが目立ってしまいます。ある程度キャリアを築いた女性にとって、経済的に自立して自分を中心とした生活を送っていたところ、結婚によりキャリアが中途半端になり、相手側の家に尽すのは、割に合わないのです。台湾では児童手当のような月額7000~13000台湾ドルの補助金制度がありますが、それでも出生率の低下に歯止めがかかっていません。