フレーザー研究所発表:香港が再び経済自由度1位に

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フレーザー研究所発表:香港が再び経済自由度1位に

カナダのバンクーバーに拠点を置くシンクタンクのフレーザー研究所が10月16日に発表した経済自由度を評価する「世界経済自由度 年次報告書2024年版」において、香港は1位に返り咲きました。昨年シンガポールにわずか0.01ポイントの差で抜かれて2位になるまで、香港は同報告書が公表されて以来28年連続で首位をキープしていました。今年は再び香港が1位となり、2位はシンガポール、3位はスイスでした。また日本は11位という結果で昨年20位から大きく順位を上げました。

評価項目は「政府の規模」「法制度と財産権」「通貨の健全性」「国際貿易の自由度」「規制(レギュレーション)」の5分野で構成され各10点満点で点数を付けます。世界165カ国・地域を対象として行われました。香港は「政府規模」におけるポイントは45位、「法制度と財産権」は21位でしたが、「通貨の健全性」は3位、「国際貿易の自由」と「規制」は1位でした。11位だった日本は、「政府規模」が130位、「法制度と財産権」が19位、「通貨の健全性」が1位、「国際貿易の自由度」が35位、「規制」が14位でした。今年の報告は2022年の経済状況を評価したもので、まだコロナ禍の影響もあり各国のデータが揃わない状況だったものの、再び世界一自由な経済圏と評価され首位に返り咲いた香港は、データが示すように世界で最も魅力的な経済圏だといえるでしょう。

さて香港政府行政長官は10月16日、任期中3回目となる施政方針演説を行い、香港の将来的な計画や目標を示しました。景気回復に向けた新たな措置、住宅など生活にかかわる制度の改善、香港市民のみならず香港に居住する外国人にも関わる内容が含まれています。

<財政・経済>

・世界レベルの金(ゴールド)の国際取引センターの構築、大口商品取引用の金貯蓄施設の設置、保険、物流サービスなど関連事業の発展を促進する。

・香港の金融決済システム「FPS」と中国本土の決済システム「IBPS」の連携を促進し、リアルタイムで少額越境決済を可能にする。

・香港で3000万香港ドルを投資する外国人が香港に移住できる移民ビザの「新資本投資者入境スキーム(CIES)」、今後は5000万ドル以上の高級住宅用不動産も投資対象とする。

・酒類の輸入関税を引き下げる。現在アルコール度数30%を超える飲料には100%の関税が課しているが、今後は輸入価格が200香港ドルを超える酒類の税率は超過分の税率を10%に引き下げる。

・高度100メートル以下の低空域での経済活動「低空経済」を発展させ、ドローンによる貨物輸送、低空越境航路の建設について本土と協議する。

・香港国際空港の第3滑走路システムを年内に完成させる。2035年から空港の収容能力を50%増加させる予定。

・香港の輸出入能力の増強、プロモーションのため「香港海運港口発展局」を新設する。

<脱炭素社会に向けて>

・タクシー、バス会社の電気自動車の購入補助金として約7億5,000万ドルを割り当てる。

・電気自動車用の急速充電施設の設置に助成金、2030年までに3,000基の設置を予定。

・水素燃料電池電気大型車両の試験のための補助金制度を開始。

・廃棄物の削減とリサイクルの推進、「I・PARK1」が来年稼働、「I・PARK2」の建設も進め「埋め立てゼロ」を目指す。

<人材誘致>

・「ハイエンド・タレント・パス・スキーム」の申請対象となる大学を13校追加し198校に拡大、初回のビザ期間を従来の2年から3年に延長する。

・「Study in Hong Kong」の創設。奨学金等を提供しASEAN やその他諸国からの留学生を誘致する。

・インターンシップ・プログラムの資格要件を緩和し、企業に付与される月額手当の限度を12,000香港ドルへ引き上げる。

<労働支援>

・今年6 月に開始された eMPF プラットフォームを利用し、従業員が雇用主の義務的拠出金から得られる未払いの給付を自分の選択でスキームに移すことができる「フルポータビリティ」提案を実施するための詳細を検討

・来年 5 月 1 日より、MPF 制度に基づく雇用主の義務的拠出金の未払い給付金を退職金と長期勤続金の相殺に充てる取り決めを廃止。雇用主のコストに充当するための補助金制度を開始。

・シルバー人材の活用、高齢者の再教育や再雇用を行い高齢者の生産性を高める。

<観光/ビザ>

・パンダ、競馬、エコツーリズムを香港観光のメインの観光商品として開発促進。

・深セン市民のためのマルチビザの再開、「週一入境」の適用は範囲拡大を中央政府に提案。

・カンボジア、ラオス、ミャンマー国民に対するマルチビザの申請基準を緩和、有効期間を2年から3年へ延長。

<住宅問題>

・今後5年間で公営住宅を18万9千戸建設する。

・「分譲住宅」賃貸制度の法制化。窓、独立トイレ、面積8平方メートル以上が条件。

・公営住宅と補助付き分譲マンションの比率を段階的に6:4に調整する。

・公共住宅入居権利の乱用防止のため、通報した人には報奨金が与えられる。

今回の施政方針には、香港の経済発展のみならず民生の改善措置も具体的に盛り込まれており、市民の期待に応えた内容になっていた印象です。