日本で850店舗以上を展開する株式会社ゲオホールディングスのリユース事業「セカンドストリート」が香港とシンガポールに進出します。どちらも今年の上半期には第1号店がオープンする予定で、香港では若者が集まる旺角の「MOKO新世紀廣場」に出店します。セカンドストリートはすでにアメリカに43店舗、マレーシアに23店舗、台湾に38店舗、タイに3店舗をグローバル展開しており、海外における中古市場の拡大、そしてリユース文化の開拓を積極的に進めています。
そして2月22日には、株式会社いーふらんが買取り専門店「おたからや」の海外1号店を香港にオープンしました。「おたからや」はブランド品・高級宝飾などの買取り専門店で、日本での店舗数は1,300店以上と日本国内では最大級です。日本では買取り専門ですが、香港でのマーケットに合わせて買取りだけではなく中古ブランド品の販売も行います。香港1号店は商業地区の尖沙咀に近い佐敦の「荘士倫敦広場」で、昨年11月に牛丼の「松屋」がオープンして話題になったばかりの商業ビルです。
日本でもお馴染みの大手中古品買取り・販売店が進出することで、香港でもリユース文化の広がりが期待されます。世界的にも環境意識の高まりから、サステナブル消費など人々のライフスタイルは変わりつつあり、今までのように新しいものを消費するだけの時代ではなくなってきました。ただ香港は人々の環境意識は高い方ですが、その意識と実際の行動には相反する部分があります。そのギャップが今後どのように変化していくかによって、今後の中古品市場の可能性も変わってくるでしょう。
香港ではリユース需要が増加しつつあるとはいえ、実際には新品志向の方が根強いです。経済的にも無理せず新品が手に入るのであれば、あえて中古品を選ぶ必要はないでしょう。また中古品というだけで品質にも懐疑的です。多国籍な人々が密集している香港で、どこの誰がどう使ったのかわからない物よりも、新品の方が安心だと思うのは当然かもしれません。
そうはいっても香港には中古品市場が存在しています。ファッション、家具、家電はもちろん、車、不動産なども含めると実に様々なものがリユースされています。下町などの住宅エリアの一角には必ずといっていいほど家具や家電を取り扱う個人のリサイクルショップがあります。引っ越しをすると家具や家電の売り・買い需要が着いて回りますので、そういう時に近所のリサイクルショップを利用します。香港は外国人の出入りが多く、仕事の都合などで海外から香港へ移住し、また数年で母国へ帰国していく人々にとって家具や家電の中古品の需要と供給は常にあります。
例えば日本人同士であれば日本語のツール(インターネット上のコミュニティ、SNS、)や友人知人の紹介などでリユースされます。こういった個人同士の取引の場合、日本人同士であれば比較的スムーズに取引ができますが、見ず知らずの外国人同士の場合は意外と難しいものです。約束した時間通りに現れない、突然のキャンセル、写真と実物に差が大きすぎる、など相手にさほど悪気が無くとも意識の違いから何かとトラブルが起こりやすくなります。個人同士の取引におけるデメリットと言えるでしょう。
近年、香港ではシンガポールが本社のフリマサイト「Carousell/ 旋轉拍賣」の利用が可能です。いわゆる「香港版メルカリ」で広く香港で利用されています。日本と違ってどこでも1時間ほどでアクセスできる香港の土地柄、受け渡しは直接対面で行われます。誰でも気軽に売り買いできるのが最大のメリットです。しかし、偽造品や海賊版の出品、詐欺などのトラブル案件が後を絶たず度々ニュースになっています。そしてフリマサイトは個人間での取引なので、買い手も値段交渉には非常に積極的で、人によっては傍若無人な態度を取ってくることもあります。売り手も買い手も、主導権を持っていかれてしまうと気持ちの良い取引ができなくなってしまいます。
今回の「セカンドストリート」や「おたからや」の出店は、既存のリサイクルショップやフリマサイトとは違った新たな風を中古品市場に吹き込むことになります。色々な品を幅広く取り扱い、中古品でもある程度の品質のものがあらかじめ選別され、中古品の状態にあった妥当な価格で買取り、販売されていれば安心して中古品を売り買いすることができます。今の香港の中古品市場、リユース市場は更に発展するでしょう。
また香港では中古車市場も活発です。香港は公共交通機関が発達していて、マイカーの保有率は非常に低いです。新車の税金(初期登録料)が40~115%と高く、新車を購入すると非常に高額になります。そのためマイカーを求める人の多くは中古車を購入します。中古車はインターネットの他、ディーラーを通じて購入するのが一般的です。そして不動産も、中古物件の取引が盛んです。香港の住宅は非常に高価で、価格も立地によるところが大きく、築年数によって価格が下がるとは限りません。そのため新築物件も人気ですが、中古物件も見劣りすることなく高値で取引されています。