香港のデジタル競争力

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香港のデジタル競争力

スイスの国際経営開発研究所/ International Institute for Management Development(IMD)が発表した、2025年最新の「世界デジタル競争力ランキング」において、香港は69の経済圏中で第4位でした。香港は昨年から順位を3つ上げてのランクインです。評価は3要素から成り立っており、その内訳は「技術」が第3位、「知識」が第5位、「未来への備え」が第10位でした。サブ指標の「技術フレームワーク」「適応力」では世界1位、「人材」「研修と教育」では世界トップ5に入っています。ランキングをアジアトップ10では、1位シンガポール(世界3位)、2位香港(世界4位)、3位台湾(世界10位)、4位中国(世界12位)、5位韓国(世界15位)、6位日本(世界30位)、7位マレーシア(世界34位)、8位タイ(世界38位)、9位インド(世界50位)、10位インドネシア(世界51位)という結果でした。国際的に高評価を受けている香港のデジタル化について見てみましょう。

香港は、行政や金融のデジタル化を戦略的に進めています。デジタル政府、デジタル金融化など、複数の分野にまたがってデジタル化への取り組みが行われています。

デジタル政府の一環としては行政サービスのオンライン化を掲げ、香港政府はデジタルIDアプリ「iAM Smart」を提供しています。香港市民(11歳以上のIDカード保持者)は、アプリ経由で認証・申請・署名などが行えるようになっています。公立病院のアプリ「HA Go」や電子税務申告の「e-Tax」を利用する際に、この「iAM Smart」を使用して本人確認ができます。今後も「iAM Smart」を中心にワンストップ化が強化される見込みです。

公立病院のアプリ「HA Go」は、香港の公立病院の混雑改善に役立っています。「HA Go」では診察の予約・確認はもちろん、医療費の支払い、処方薬の情報確認も行えます。介護者モードでは患者が服用している薬を家族が把握でき、リハビリプログラムではアプリを通じたリハビリも実施されています。公立病院は診察料の負担が少ない一方で、患者数が多く非常に混雑しているため、待ち時間が長くなるのが従来の常識でしたが、アプリの活用により待ち時間は平均2時間以内に改善されました。

「e-Tax」は以前からあったオンラインで税務申告ができる電子税務システムですが、今年8月より、さらに新たな税務ポータルが開設されました。

・個人向け(ITP)は、個人の税務申告提出、個人情報の更新、税務状況の閲覧ができます。

・事業者向け(BTP)は、法人税等の申告提出、事業者の登録や変更もできます。

・税務代理人向け(TRP)は、税務申告書の提出、コンプライアンス追跡、複数のクライアントの業務を管理できるようになっています。

香港税務局は、多くの人が積極的にe-Taxを利用するよう推奨しています。

香港警察署からも有益なアプリが提供されています。香港では個人を狙った投資詐欺や、ロマンス詐欺、企業を狙った送金詐欺など、近年SNSを利用した詐欺が多く、その手法は多様化しています。香港警察署による詐欺対策アプリ「Scameter+(スキャメータープラス)」では不審な電話やEメールを、アプリを通じて識別できます。基本的な機能は4つあります。

1.検索エンジン(電話番号やURLから詐欺要素があるか検索できる)

2.通話アラート(着信元が詐欺の番号データベースと一致する場合、通知が出る)

3.ウェブサイト検知(ウェブサイト閲覧時、怪しいサイトであれば、通知が出る)」

4.公共インテリジェンス(アプリから怪しいサイトや電話番号を投稿することができ、その内容が分析・検証された上で、今後の新たなデータベースになる)」

いずれもこれまで蓄積されたデータベースをもとに安全かどうかが判断されるため、まだデータベースに無い新たな詐欺の場合もあるため、このアプリで安全と判断されたとしても、やはり個人レベルでの十分な注意が必要とのことです。

金融関係では11月3日、香港金融管理局(HKMA)が「Fintech 2030」戦略を発表しました。フィンテック(金融技術)の40以上の具体的な戦略を掲げ、HKMAは香港を世界有数のフィンテック拠点として位置付けることを目指しています。

主に4つの戦略柱(DART)が設定されています。

・第一の柱はD、Data & Payment Infrastructure(データ/決済インフラ)

次世代データ・決済インフラの開発、安全かつ拡張性の高いデータ共有の強化、越境決済・データ連携の強化。企業なら貿易による決済アクセスの向上、個人間では越境送金の簡易化などを目指します。

・第二の柱はA、Artificial Intelligence × Authorized Institutions Strategy(AI²戦略)

金融機関でのAI導入を包括的、かつ責任のある形で推進します。

・第三の柱はR、Resilience – Business, Technology and Quantum(回復力:事業・技術・量子)

金融セクターのサイバーセキュリティ・インフラ・技術的耐性を強化します。フィンテック特化のサイバー証明制度、新たな早期検知システム、ポスト量子暗号(PQC)や量子安全インフラを準備します。

・第四の柱はT、Tokenisation of Finance(金融のトークン化)

「実世界資産(Real-World Assets)」のトークン化を加速させます。政府債券のトークン発行、同時にe-HKD(香港デジタル香港ドル)やトークン化預金、規制付きステーブルコインなどを決済基盤に活用していきます。 香港のデジタル化戦略は今後さらに香港の魅力を高めるでしょう。