香港ビジネス日系企業の現在と未来

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香港ビジネス日系企業の現在と未来

在香港日本国総領事館、ジェトロ香港事務所、香港日本人商工会議所が共同し、2026年2月時点で香港における日系企業を対象に、香港を取り巻くビジネス環境に関するアンケート調査を実施しました。

第16回 香港を取り巻くビジネス環境にかかるアンケート調査(2026年3月)

https://www.jetro.go.jp/view_interface.php?blockId=40949181

231社の回答データに基づいた調査結果から見える香港ビジネスの現状を解説します。

1. 業績動向:DI値が「プラス」に転換

企業や経済全体の動向を数値化したDI値(景気動向指数)が、コロナ禍の2022年上半期にマイナスに転じて以来、初めてプラス(5.0)に回復しました。さらに2026年の見通しは12.7と、改善が見込まれています。業種別に見ると、特に金融・リース業が全体を牽引しており、商社や卸売業も2026年は改善に向かうと予測されています。業績の改善理由としては「香港市場での売上増加」が最多(35.5%)で、次いで「中国本土以外の海外市場への輸出拡大による売上増加(26.3%)」となっており、いずれも期待が高まっています。一方、2026年の業績見通しについて約半数の企業は「横ばい」と回答しています。

2. 人材動向:深刻な「人材不足」に変化の兆し

これまでの調査で大きな課題だった人材確保については、人材不足による業務への悪影響を感じている企業は4.8%にとどまり、2023年1月からの設問以来、最も低い水準になりました。しかし、人材について課題が完全に解消されたわけではなく、過去1年間に離職があった企業は約半数にのぼり、そのうち27.4%が代替人材の確保に苦労しています。主な理由は「採用条件を満たす人材の応募がない」ことで、目下の課題となっています。

3. 物流環境:中国市場の停滞による影響

物流分野は厳しい状況が続いています。物流企業の約6割が、香港からの輸出・輸入ともに「物流量が減少した」と回答しています。その理由として「中国市場の停滞による影響」と「サプライチェーンの再編(チャイナ・プラス・ワン、香港迂回貿易など)」が共に65.5%で最多となっています。香港域内のコスト高や労働力不足と、輸送費用や倉庫費用の悪化を指摘する声もあります。「中継貿易のハブ」だった香港の機能が、徐々に構造的な変化を迫られていると言えます。

4. 国家安全関連法:懸念は低下傾向に

「香港国家安全維持法」および「国家安全維持条例に対する懸念(「大いに懸念」+「懸念」)は34.2%となり、前回調査から低下しました。実際に「施行によるマイナスの影響が生じている」と答えた企業はわずか8.2%にとどまり、7割の企業が「影響は生じていない」と回答しています。ビジネス現場では法律そのものよりも、実務的なコストや経済の見通しに意識が向いている様子がうかがえます。

5.香港拠点の位置づけ(メリット及び評価)

今回から新設設問となる香港のメリットについては、「低税率」「フリーポート(関税が原則無税)」「中国市場へのアクセスの容易さ」が上位となりました。続いて「金融・資本市場」「優秀な人材(香港人)」が評価されています。また日本本社による香港の評価も新設設問として加えられ、過半数が「どちらともいえない」でしたが、約8割以上の企業において本社から役員クラス以上の社員の来訪があり、対面往来が広く定着していることが分かりました。

6.大湾区(GBA)への期待と課題

広東省・香港・マカオを一体化する「粤港澳大湾区(GBA)発展計画」について、約半数の企業がこの計画に「期待している」と回答しました。特に市場拡大やイノベーションの進展に期待が寄せられています。一方で、「自社事業には関係がない」と考えている企業も少なくありません。現時点において制度や実現性はまだ身近ではなく、いかに日系企業が具体的なメリットを享受できるかが、今後の焦点となるでしょう。

7.北部都会区(Northern Metropolis)の開発

大湾区(GBA)と並んで注目されているのが、香港北部の新開発エリア「北部都会区」です。本調査では、48.0%の企業がこの開発に「期待している」と回答しています。具体的には「市場拡大(56.2%)」や「ビジネス環境の整備(50.4%)」が上位を占めています。一方で、GBAと同じく約半数の企業は「自社事業との関係が薄い」と感じており、「関心が低い」または「業務多忙で内容を把握できていない」割合がやや高い傾向にあります。課題としては、計画の実現性、財源確保、インフラ整備、また香港の存在意義が薄まることへの懸念などが挙げられています。

今後、日系企業の香港拠点の役割はどう変わるでしょうか。現在、多くの日系企業は香港拠点の活用方針を「現状維持(62.3%)」としています。「縮小・撤退」を検討する企業は10.3%に減少し、逆に「拡大」を検討する企業が微増(7.8%)するなど、香港の価値を再評価する動きも見られます。香港は今、コスト高や物流の変化という試練に直面しながらも、金融ハブとしての強みや低税率という強いメリットを武器に、新たな成長の形を模索しています。