日本では2020年7月より、レジ袋が有料になりました。一方、香港でレジ袋の有料化は日本より10年以上も早い2009年に始まりました。当初はスーパーに限ってレジ袋が有料でしたが、2015年4月からはスーパー以外のあらゆる店においてもレジ袋は全面的に有料となりました。実際にレジ袋の削減だけで削減できるプラスチックごみはほんの一部に過ぎませんが、有料化をきっかけに、人々が身の回りに溢れたプラスチック製品の取り扱いに関してライフスタイルを見直すなど、エコ意識を高めることに繋がります。私たちも今やエコバックを使う生活にもすっかり慣れ、それほど不便に感じることもなく、必要に応じてレジ袋を購入する際には環境問題を意識するようになったのではないでしょうか。エコバック(広東語で環保袋)は、香港でも今や様々な種類が発売されており、お店のロゴやブランド名が入っているもの、おしゃれな柄も多く香港土産にもなっています。
また、プラスチックごみの海洋汚染問題が世界的に話題となった2018年には、香港では早速プラスチックストローの提供を控える店が多く見られました。SNSやメディアの影響で、プラスチックごみで傷ついた魚やウミガメなどの海洋生物を目の当たりにしたことがきっかけとなり、市民の環境保護への関心が高まったように思います。当たり前に身の回りにある物がどのように廃棄され環境に影響を及ぼすのか、その繋がりが見えると行動が変わる一つの良い例となりました。
さて日本では当たり前のゴミの分別ですが、基本的に香港ではごみの分別収集はされていません。家庭から出た燃えるゴミも、燃えないゴミも、プラスチックごみも、ガラス瓶も、生ごみも、全て同じごみ袋に入れて一緒に捨てられています。街中にはあらゆるところにオレンジ色の大きなごみ箱があり、いつも清掃員がごみを回収しています。数年前から試験的にマンションや街角に分別用のごみ箱が設置されていますが、日頃から分別の習慣がない香港市民のうち一体どれくらいの人が、このごみ箱を利用しているでしょうか。リサイクル資源の回収を促進するため、最近ではプラスチックボトルの自動回収機が登場しました。プラスチックボトルを1本入れると電子マネーで10セントなどキャッシュバックされる仕組みです。
分別せずに捨てられたごみは、香港人の多くが認識している通り埋立地に運ばれます。以前は焼却施設がありましたが、1997 年に市民や環境団体からの反対を受け閉鎖されました。
今後どのようにゴミを処理するかは大きな社会問題となっています。埋立地といっても香港周辺の土地を永久に埋立て続けるわけにもいかず、埋立地の限界が専門家によって何年も前から指摘されてきました。香港政府は2035年までの資源リサイクル計画をまとめた「香港資源循環青写真2035」を発表しており、ごみの削減や資源の再利用を強化し、2035年を目途にごみの埋め立てをゼロにする目標を掲げています。
環境問題の解決には政策はもちろんのこと、プラスチックストローのように香港市民が当事者意識を持って取組むことが大切です。教育の場でも環境問題に関する授業を取り入れたり、地域でワークショップを行ったりするなど、子どもから大人まで環境について学ぶ機会が徐々に増えてきました。
屯門第38区にあるエコパーク(環保園/Eco park)は、香港政府の環境保護署により管理された香港初のリサイクル産業の工業団地です。香港内のリサイクル産業を促進するための措置として始まり、テナント料の負担を抑え、先進技術を駆使してリサイクル産業の発展を促しています。エコパークは2段階で開発され、フェーズⅠ、フェーズⅡに分かれています。
フェーズⅠ:食用油、プラスチック、木材のリサイクル
フェーズⅡ:タイヤゴム、電池、電子機器、建築廃材、ガラス、金属のリサイクル
広さ1000平米ものビジターセンターは、香港初の廃棄物管理をテーマとした大型の資源教育センターで一般の訪問客を受け入れ、教育や普及活動を行っています。廃棄物を処理する様々な方法や、廃棄物をいかに削減するかを学びながら人々の環境保護への意識を高めます。多彩な展示エリアを通じて、「Reduce(削減)、Reuse(再利用)、Recycle(リサイクル)」という3つのRについて改めて考え、環境に優しいライフスタイルを考えることができます。グリーンルーフ、グリーン駐車場、太陽光温水システムなどの設備も見学できます。
また、エコパーク内にあるWEEE・PARKは、電化製品のリサイクル施設です。電化製品には鉛や水銀など有害物質が含まれており、適切に廃棄処理しないと人体や環境に有害となるため、WEEE・PARKでは先進的技術により安全なプロセスで有害物質を取り除き、素材の再生利用を行っています。WEEE・PARKには展覧室もありますので、電化製品のリサイクル過程を理解しながら、再生利用の重要性を体感することができるでしょう。
訪問には事前予約が必要です。
エコパークの公式サイト:https://www.ecopark.com.hk/tc/index.aspx