香港と日本産品、香港の輸入規制について

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香港と日本産品、香港の輸入規制について

今年の夏は香港から海外旅行を計画する人が増えています。日本行きの航空チケットの販売も好調で、香港から日本へ旅行する人は一段と増えました。この3年の間、香港人の日本に対する興味が薄れることなく、変わらず日本贔屓でいてくれたことが何より嬉しいですね。円安も手伝って日本旅行は今の時期がお得でしょう。

香港と日本の往来が自由にできなかったこの3年間ですが、人の往来とは別に一部の日本企業の進出は意外にも積極的でした。「Don Don Donki」や「スシロー」は順調に香港内で店舗数を増やしています。コロナ禍真っ只中のスタートでしたが、テナント料が下がっていたのが追い風のひとつとなりましたし、香港人が日本へ気軽に旅行できなかった時期、日本に行かなくても日本のお店が利用できたことが香港人の需要に上手くマッチしました。後から香港に上陸した「すき家」や「コメダ珈琲」も、これから店舗数を増やしていくようです。

香港には多くの日本の飲食店が出店しており、最近では行列のできる日本橋海鮮丼「つじ半」が東俑にオープンしました。一般的に海外の初出店先として香港を選ぶ企業は多く、東京の名店はもちろん、北海道、京都、沖縄など各地の有名店が香港に集中しているので、コンパクトな香港に居ながらにして日本全国各地の有名店を堪能することができます。飲食店が海外進出を考える時、まずは香港を足がかかりとして中国本土や東南アジアに拡大していくというシナリオが王道です。香港は日本から距離的に近く、貿易自由港(フリーポート)で税関手続きは複雑でなく、資金の移動など金融面でも香港は自由度が高く融通がきくので非常に便利です。食材に関しては、近年の物流技術の発達により冷蔵のままや冷凍のまま空輸することも可能となり、より新鮮な食材を香港で提供することが叶いました。多くの香港人は日本の各地を旅したことがあって現地の味や名店を知っているので、飲食店が香港店を出す際に特別な宣伝活動も必要ありません。出店当初から十分な集客も見込めるので営業しやすいのです。香港で海外の店舗経営のノウハウを得たら、次のステップとして東南アジア各国や中国本土へ店舗を拡大していくと、スムーズに海外展開が進められるようです。

さて、最近話題になっている東京電力福島第一原子力発電所の「処理水」の海洋放出ですが、今年の夏から放出されることについて世界的に議論されており、香港でもニュースとなっています。報道されているように、国際原子力機関(IAEA)は福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出計画について安全基準に合致しているとした報告書を出しており、今回の放出計画による人や環境への影響は「無視できる程度のもの」と評価しています。しかし近隣諸国は反対をしており、北朝鮮、韓国、中国は日本からの海洋放出に猛反発しています。

福島第一原発は事故後の対応で1日140トンのペースで汚染水が発生しており、それらは浄化設備で放射性物質のほとんどが取り除かれるのですが、「トリチウム」は取り除くことが難しいため、処理された水の中にトリチウムが残っている状態で現在はタンクに保管され続けています。保管スペースが有限であることから、廃棄方法については数年前から議論されてきました。トリチウムは自然界にもあり、人間の体内にもわずかながら存在します。通常の原子力発電の際にも発生し、それらは薄めて海や大気に放出されており、人体への影響リスクは低いとされています。しかし海外の専門家の中にはトリチウムを含む処理水が海洋放出されたあと、有毒な有機トリチウムが生成され、食物連鎖によって人間の口にも入るのではと懸念する人もいます。

香港は、日本の海産物、農産物の輸出相手国第2位です。それらは香港内で消費されるだけでなく香港経由で中国本土にも渡ります。2011年の福島原発事故当時、香港は福島を含む近隣4県からの野菜、果物、乳製品の輸入を禁止しました。そして2018年以降は福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県から水産物、食肉、卵を、放射性物質検査証明書の添付を義務づけるなど条件付きで香港への輸入が緩和されました。そしてこの夏、日本が処理水を海洋放出した場合、香港政府は福島県周辺で採れた水産物の輸入を禁止する措置を取ると示唆しています。

もともと香港人には医食同源の考えが根付いており、人々は健康意識が非常に高く、食の安全についても関心が非常に高いです。土地が狭く農業が盛んでない香港では、食品のほとんど全てが輸入品であり、スーパーには同じものでも中国本土、東南アジア、欧米など様々な国のものが並んでいます。食品表示も日本より詳細で、カロリー表記の他トランス脂肪酸や飽和脂肪酸まで詳しく表示されていますし、人々は農薬や添加物についても気にしており、知識も豊富です。スーパーで手に入る食品は大前提として香港政府の基準をクリアしたものですが、やはり産地、価格、品質など多くの選択肢がある中、世に出ている情報を元にして、何を選択するのかは自分自身だけが頼りとなります。