香港のお盆

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香港のお盆

香港のお盆は正式には「盂蘭節(ユーランジッ」と言いますが、一般的に香港人は「鬼節(グワイジッ」「鬼月(グワイユッ)」と呼んでいます。鬼といっても日本の節分に退治するような鬼ではなく、広東語で鬼は「お化け」の意味になり、お盆の場合には亡くなった方の「霊」を指します。香港のお盆は日本と違い、1か月ほど(今年は8月16日~9月14日)続きます。旧暦の7月14日にあの世の門が開かれて霊がこの世をさまようとされ、旧暦7月15日(2023年は8月30日)がお盆当日となります。香港で生活するにあたってお盆の由来、風習、禁忌などについて知っておくと便利です。

<由来>

盂蘭節の起源は諸説ありますが、およそ仏教の「目蓮救母」の物語がルーツとされています。中国の古文書「仏説盂蘭盆経」によると、釈迦の弟子「目蓮」の亡くなった母が地獄に落ちて苦しんでいたので、目蓮は母を救うにはどうしたらよいかとお釈迦様に相談し、その教えの通り7月15日に手厚い供養をしたところ、目蓮の母親が救われたといいます。そして「盂蘭」とはサンスクリット語で「倒懸(さかさ吊りの苦しみ)」という意味から、お盆に苦しみから霊を救うという意味があり、目蓮の物語からわかるように親孝行、ひいては先祖を敬う時期ともされています。

<風習>

「盂蘭節」の期間には街中に霊がさまよっているため霊が人々に悪さをすると言うことから、民家の周りなどでは道端で紙を燃やしたり、果物や線香を供えたりする光景「焼街衣」が見られます。あの世で不自由しないようにと紙でできたお金や服を燃やすのはお葬式などでも見かける習わしでですが、この時期にも同様の作法で供養します。盂蘭節は身内の供養というよりも、十分に供養されずにいる霊たちを供養するという意味合いが強いので、お供え物も鶏肉や魚、故人が好んだ食べ物などではなく、鴨肉、干し龍眼、モヤシ、などが一般的です。そして自宅ではなく地域の広場や公園、寺院などで盂蘭節の祭事が行われます。

<盂蘭勝会>

この時期、香港各地ではそれぞれ「盂蘭勝会」という祭事が行われます。もともと潮州人などによって持ち込まれた風習のため、潮州人が多く住んでいるエリアでは特に祭事が活発です。「盂蘭勝会」の流れを紹介しますと、初日には神様を招く「請神」の儀式が行われ、その翌日から3日間は霊に見せる芝居「神功戯」を行われます。その舞台の初日は霊にだけ見せるという意味があるため、芝居が行われている客席には誰もいません。2日目、3日目は誰でも自由に入って芝居を見ることができます。そして最終日にはお米「平安米」が配られます。

<お盆の禁忌>

日本でも「お盆の時期に海に入ると霊に足を引っ張られる」などの迷信があります。科学的根拠がないようで、やはり夏はどうしても水辺の遊びが増え水難事故が多くなるため、危険から遠ざけるために昔の人が言い伝えたのだとも考えられています。香港のお盆の時期にも禁忌とされていることがあり、日本よりもさらに多くあります。

・新しいお店のオープン、結婚、引っ越しは避けた方が良い。(縁起が悪いとされるため)

・水辺(海、川、プール)に近づかない。(霊が身代わりを探しているため)

・壁にもたれかかったり、道の端を歩いたりしない。(霊は壁側や端を好むため)

・暗い場所には行かない。(霊がうろついているため)

・終電、終バスには乗らない。(霊が乗っているため)

・バスの最前列には座らない。(最前列の席には霊が座っているため)

・ベッドにつま先を向けてスリッパを脱がない。(霊はスリッパの向かう方向へ来るため)

・夜に写真を撮らない。(霊が映り込むため)

・夜に窓辺に服を干してはいけない。(霊が憑依しやすいため)

・夜に後ろから名前を呼ばれても振り返らない。(霊が身代わりを探しているため)

・夜に口笛を吹かない。(霊が呼ばれていると思って寄ってくるため)

・他人の肩を叩いてはいけない。(肩にエネルギーがあることで霊が近づかないため)

・額を隠してはいけない。(額にエネルギーがあることで霊が近づかないため)

・街で紙や線香を燃やした「焼街衣」の燃えかすは踏んではいけない。

・道に落ちている小銭は拾わない。(霊が奪われたと勘違いしないように。)

日本でも「夜に口笛を吹かない」は誰もが聞いたことがあるでしょうし、うっかり夜に口笛を吹いてしまった時、実際に不吉なことが起こるわけではありませんが、何となくタブーを犯した気持ちになるものです。上述した香港のお盆の禁忌は、日本人にとっては馴染みが無くても、香港人にとっては避けたいものです。そのためこの時期に香港人の肩を叩いたり、後ろから呼びかけたり、バスの最前列に座るよう勧めたりしないよう気をつけましょう。上記以外にも禁忌がまだまだありますので、この時期にこれをしてはいけないと言われることがあるかもしれませんね。また、禁忌というわけではありませんが、外国人が物珍しさから街角で「焼街衣」をしている方にむやみに近づいたり、写真を撮影したりするのは控えましょう。