東京の上野動物園で飼育されていたジャイアントパンダ、リーリー(雄)とシンシン(雌)の2頭は9月29日に生まれ故郷の中国四川省へ帰りました。前日の9月28日には来園者と最後のお別れをし、中には涙ぐむ人の姿も見られました。
2頭の中国への返還が決定したのは1か月前の8月末です。19歳で高齢に差し掛かった2頭は昨年9月から高血圧の症状がみられ、中国と日本の専門家が協議した結果、2026年2月の貸与期限を待たずに生まれ故郷の四川省へ返すことになりました。2頭は2011年2月に上野動物園に到着し、東日本大震災による休園のため少し遅れて4月から一般公開され、震災直後の日本にたくさんの笑顔と元気を与えてくれました。2017年にはシャンシャン(雌)が誕生、2021年には双子のシャオシャオ(雄)とレイレイ(雌)が誕生しました。シャンシャンはすでに昨年、2023年2月に中国へ返還されていて、今後は双子のシャオシャオとレイレイの2頭だけが上野動物園に残ります。この双子も2026年2月には中国へ返すことになっています。
日本へ初めてパンダが贈られたのは約50年前の昭和47年で、日中国交正常化を記念して上野動物園に初めてジャイアントパンダ2頭が贈られました。それまで日本ではパンダという動物の存在はあまり知られておらず、当時人々が初めて目にした白と黒のぬいぐるみのようなその姿に、空前のパンダブームが巻き起こりました。愛らしいパンダの様子を一目見ようと上野動物園へ詰めかけた来園者は数時間も列に並んだと言います。それ以来、パンダは動物園でも他の動物とはどこか別格で、今も日本人に愛され続けています。現在日本では上野動物園の他、和歌山のアドベンチャーワールドでもパンダが暮らしています。
一方、香港では9月26日、新たにジャイアントパンダ2頭が中国四川省から到着しました。75周年の国慶節を目前に、中国政府から香港へ贈られたものです。現在香港で暮らすパンダは、2007年に贈られた楽楽(ラーラー)、盈盈(インイン)、そしてその間に今年8月に生まれた双子の4頭と合わせると、世界最多の6頭になります。今回到着した雄の安安(アンアン)、雌の可可(ココ)の2頭はともに5歳で新しい環境に馴染ませた後、12月中旬よりオーシャンパークで一般公開される予定です。中国は日本を含む世界20か国以上にパンダを貸与し、いずれも期限付きで中国へ返還されるのですが、香港へ贈ったパンダは将来の子どもも含めて返還は求めずそのまま寄贈されます。
リーリーとシンシンの帰郷は、多くの人々にとって感慨深い瞬間でした。彼らが上野動物園で過ごした日々は、日本の動物園文化において大きな役割を果たし、パンダへの愛情を深めるきっかけとなりました。これからも上野動物園では新たな世代のパンダたちが訪れる人々に笑顔を届けることでしょう。リーリーとシンシンの思い出を胸に、私たちはこれからもパンダたちの未来を見守っていきたいと思います。