香港の所得税

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香港の所得税

2月14日にMTR屯馬線(Tuen Ma Line)の第一期が開通しました。第一期は大圍(Tai Wai)から啓徳(Kai Tak)までを結ぶ4駅で、顯徑(Hin Keng)駅と啓徳(Kai Tak)駅の2つが新設されました。途中で鑽石山(Diamond Hill)駅を通るので、観塘線(Kung Tung Line)との乗り換えも便利になります。啓徳(Kai Tak)といえば、旧空港ですね。1998年の閉港までアジアのハブ空港として発展し、市街地にあるため「世界一着陸が難しい空港」として有名でした。現在その跡地は啓德郵輪碼頭(Kai Tak Cruise Terminal)となり、クルーズ船のターミナルとして利用されています。またその周辺は啓徳跑道公園(Kai Tak runway park)として整備された広大な公園になっています。もう一つの新しい駅である顯徑(Hin Keng)は、集合住宅、学校、病院、ショッピングモールがあり、そこで生活する人たちのための庶民的なエリアです。今回、駅が新設されるのに合わせて庶民の台所であるマーケットも一新し、さらにグルメストリートも増設されました。屋台めしからスイーツまで種類豊富なグルメを楽しめるので、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

さて、2月~3月の日本は確定申告の時期です。香港では日本のように所得税が給与から天引きされないため、春になると所得税の申告を個人でしなければなりません。香港で働く上で知っておきたい個人所得税について、計算方法なども合わせご紹介しましょう。

<スケジュール>

香港の所得税は日本のように毎月の給与から天引きされないので、所得税のためにまとまった金額を手元に残しておくと安心です。また、香港で就業して1年目は所得税の申告は不要で、初回の申告時に2年分の所得税を納めることになります。

4月・・まず、香港税務局(Inland Revenue Department)から企業へ給与所得税(Salaries Tax)にかかわる申告書(IR56B)が発行されます。企業は前年の4月~今年3月までの1年間に支給した給与を各従業員別に記載して申告書を作成し、1か月以内に税務局へ提出します。ほとんどの企業はそれと同時に、申告書のコピーを各従業員へ手渡すので、受け取ったら失くさないよう保管しましょう。

5月・・次は個人宛に税務局から個人所得税の申告書(BIR60)が郵送されます。事前に会社から受け取ったIR56Bのコピーを参考に申告書へ必要事項を記入し、1か月以内に税務局へ提出します。勤め先からの給与以外に不動産など他にも収入がある場合は、忘れずに記入します。

8月以降・・税務局から、「確定税額通知書」が届きます。納税期限は通知書に書かれており、初回は75%と、2回目は25%で、それぞれの期限が2回に分けて記載されていますので期限内に納めましょう。

<控除について>

基本控除(独身・既婚)、子女控除、扶養控除(父母、祖父母)扶養兄弟姉妹控除、学費控除、寄付金控除、住宅ローン控除などがあります。また、MPF(強制積立年金)も非課税なので控除されます。MPFは毎月の給与から天引きされていると思いますが、申告書を作成する時にはMPFも入れた年収から計算していくので、1年間に支払ったMPFの金額も忘れずに控除して計算しましょう。

<課税所得の算出方法>

例えば月収3万香港ドル、ダブルペイ有、ボーナスが1万香港ドルとすると年収は3万香港ドル×13か月+1万香港ドル=40万香港ドル、また、MPFは月収から毎月1500香港ドル、年間18000香港ドル天引きされているとします。

【2021/2022年度】
①独身者の場合
所得総額:400,000HKD
基礎控除(独身):-132,000 ※年度によって変動します
MPF: -18,000 ※上限18,000です。
課税所得:250,000HKD

<所得税の算出方法>

計算方法は「超過累進課税」と「標準税率課税」の二種類あり、まず両方の方式で計算してみて、低い方の金額が所得税額となります。実際のところ、標準税率(15%)の方で所得税が低くなるのは独身の場合、年収202万2000香港ドル(約2700万円)以上の方なので、その他の方は「超過累進課税」で計算した方が低くなるはずです。

「超過累進課税」とは、課税対象所得が一定額を超える毎に、次の段階の税率が適用されていく仕組みで、課税所得額が大きくなるほど税率は高くなります。

最初の5万HKD・・2%
次の5万HKD・・6%
次の5万HKD・・10%
次の5万HKD・・14%
残りの額全て・・17%

先ほどの例で計算すると、課税対象額が25万香港ドルですので、

最初の5万HKD×2%=1000HKD
次の5万HKD×6%=3000HKD
次の5万HKD×10%=5000HKD
次の5万HKD×14%=7000HKD
残り5万HKD×17%=8500HKD

これら全ての合計が24500HKDとなり、これが本来納めるべき最終所得税です。
ただし2021/2022年度は、ここから「特別税額控除」として10,000HKDが控除されますので、最終的に14,500HKDが納めるべき所得税となります。

同じ年収で、違う家族構成のパターンでも計算してみましょう。

②既婚・配偶者ありの場合
所得総額:400,00HKD
基礎控除(既婚):-264,000HKD ※年度によって変動します
MPF: -18,000HKD ※上限18,000です。
課税所得:118,000HKD

最初の5万HKD×2%=1000HKD
次の5万HKD×6%=3000HKD
残り1万8000HKD×10%=1800HKD

これら全ての合計5800HKDが本来納めるべき所得税ですが、今年度の「特別税額控除」が適用されるため所得税額は0となります。

デモや新型コロナウイルスの影響から市民の生活を支援するため「特別税額控除」として2019/2020 、2020/2021に引き続き、2021/2022も最終所得税に対し2万香港ドルを上限に100%免除されます。