10月に入ってから香港は台風が続いています。10月8日に台風17号(ライオンロック)が発生し、続いて超大型の台風18号(コンパス)が発生しました。10月の台風は珍しく、さらにわずか4日間のうちに2つも台風が香港に接近することは非常に稀です。市民は心休まる間もない状態で、買いだめに走りスーパーの陳列棚からは食品が姿を消しました。香港は大都市であちこちにスーパーやコンビニがあり、また食材の新鮮さを重視するため日ごろから食材をストックする習慣がありません。台風が接近している間スーパーは臨時休業となり、また交通規制によって物流機能もストップするため、台風が通過してからの数日間、スーパーでは商品の補充が元に戻るまで時間がかかります。そのため、香港では台風接近の前に必ずといっていいほど市民による買いだめが見られます。
香港では台風が接近すると香港天文台からシグナル(警報)が発令されます。シグナルは現在5段階あり、1・3・8・9・10です。シグナル3から幼稚園が休み、船便が欠航となり、シグナル8以上になると学校、会社、公的機関、商店、金融市場が休みとなり交通機関が止まります。9と10は香港を直撃する際に発令されます。このシグナルによって学校や仕事が休みかどうか一目瞭然なので非常に便利です。またシグナルの引き上げ・引き下げは予告として数時間前に発表されるため、市民も前もって行動しやすくなり混乱を防ぐことができます。例えば仕事先であっても、あと2時間後にシグナル8へ引き上げと発表されれば、交通機関が止まる前に帰宅することができるわけです。平日の朝などは登校すべきか、通勤すべきか悩むものですが、紛らわしい時間帯は天文台が早めにシグナル8を出すこともあり不要な混乱を防ぐ役割もしています。日本も計画運休がやっと行われるようになりましたが、交通機関が動いている限り仕事場へ向かう暗黙のルールがあります。昨今の異常気象で台風の規模も昔とは違いますから、日本も香港のように台風接近時は一斉に自宅待機と決められていた方が安全で合理的かもしれません。
さて、今回は香港の車事情について紹介します。
公共交通機関の発達している香港では、車は生活必需品ではなく、車を持っていない人がほとんどです。香港では購入時の税金や維持費が高く、香港で車を所有している人のほとんどが富裕層です。収入に余裕のある人が車を買うことから香港の街中ではベンツ、ロールスロイス、BMW、フェラーリ、ランボルギーニ、テスラなど高級車をよく見かけます。セダンが多いですが、トヨタのアルファードなど高級ミニバンも人気です。
香港では車を製造していませんので、香港内で正規に販売されている車は全て輸入品です。香港は一般に関税や消費税がありませんが、車に関しては別です。香港で車を購入すると車輛首次登記税(車輛初期登録税)という高い税金がかかり、車の価格によって40%~115%が課せられます。
HKD150,000まで 40%課税
HKD300,000まで 75%課税
HKD700,000まで 100%課税
HKD700,000以上 115%課税
香港政府環境局は、二酸化炭素など温暖化ガスの排出をゼロにする取り組みのため、環境保護の観点から電気自動車(EV車)を推奨しています。そのため電気自動車を購入する場合はこの「車輛初期登録税」が全額免除されます。現在は電気自動車のタクシーも一部で導入されており、中国の電気自動車メーカーが進出しています。電気自動車の普及には充電スタンドの拡充が大前提のため、今後インフラが整えば電気自動車のシェアも徐々に広がるでしょう。
そのほか、香港内で中古車(車輛初期登録税を納税済)を購入する場合も、高額の税金を支払う必要はありません。中古車を購入した場合、運輸局で所有権の移転の手続きにかかる費用はHKD1000ほどです。他に「車輛登記(Vehicle License)」を毎年更新する必要があり、更新料がかかります。排気量1500㏄の車の場合HKD4000/年ほどでしょう。更新を証明する紙が発行されますのでフロントガラスに見えるように貼っておきます。最近は郊外に住む人や小さい子どもがいる家庭でも車を所有する人が増えてきていますし、新車にこだわらなければ意外と手の届く範囲で車を持つことができそうです。
また、自動車保険は強制的に加入義務があり、保険会社は自由に選べます。香港には大手の保険会社がひしめいているため各社の価格競争も激しく、日本に比べると保険料は安く済みます。ガソリン代と駐車場代も必要不可欠です。香港のガソリン代は日本の倍ほどで、世界一とも言われていますが、地理的に狭い香港内でそれほど長距離を移動することも少ないことから実際ガソリン代はそれほどかからないかもしれません。駐車場代は、香港の家賃と同様に年々上がってきています。現在だいたい市内だと月2000~3000ドルほどかかります。また、日本のような2年や3年おきの車検制度はありませんが、初回登録から8年を経過した車は検査する必要があります。
新車を購入する時にかかる高額の税金以外の維持費用においては、東京で車を所有するのとそれほど変わらないかもしれませんね。