香港の物価高騰

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香港の物価高騰

世界的なインフレに伴い、香港も物価が上がり続けています。

11月22日に香港の主要電力会社の2社が来年1月からの電気料金の値上げを発表しました。11月現在の電気料金と比較し、中華電力(CLP)は6.4%、香港電灯(ホンコン・エレクトリック)は5.5%値上げとなります。香港の電気料金は、基本料金と燃料調整費を加算したものを割り戻して算出されますので、中華電力の場合、基本料金はおよそ93.7HKセント/kwで現状維持ですが、燃料調整費が引き上げられ実質料金が154.4HKセント/kwとなります。香港電灯は基本料金を109HKセント/kwから114.5HKセント/kwへ値上げ、燃料調整費も引き上げ後197HKセント/kwとなります。基本料金とは違って、これらの燃料調整費は来年1月~2月の料金ですので、3月からの料金はさらに引き上げられる可能性があります。

また、香港では公共交通機関の値上げラッシュが続いています。

香港の各バス会社は値上げ申請を香港政府(運輸及物流局)に提出しました。申請内容は、乗車運賃を現状より10~20%値上げするというものです。MTRの新路線サービスが始まったこと、新型コロナウイルスの影響などでバスの利用客が減少していること、人件費の上昇などを申請理由としています。

そしてタクシーも今年7月に3ドルの値上げが適用されたばかりですが、現状よりさらに6ドルの値上げ申請をしています。香港市内を走る赤色のタクシーは、初乗り2㎞までの距離は現在27ドルですが、値上げ後は33ドルとなります。バスと同じように利用者の減少などを理由に申請しています。

スターフェリーも運賃を現状の2倍へ値上げ申請を行いました。スターフェリーの赤字経営は既に2018年頃から報じられていますが、その観光資源としての役割や、歴史的価値から、債務超過のまま何とか経営している状態でした。しかしコロナ禍による観光客の減少、交通手段としての利用者の減少などから経営が苦しくなる一方で、昨年の赤字は3700香港ドルにも膨らんでいました。値上げ申請の具体的な内容は中環~尖沙咀間、灣仔~尖沙咀間の片道料金を平日3.2香港ドルから6.4香港ドルへ、土日祝日は4.2香港ドルから8.4香港ドルへ、さらに料金が無料だった高齢者は有料の2香港ドルにとするというものです。

コロナ以前から香港は世界的にも物価が高い都市として知られていましたが、交通費や電気料金はそれほど高くありませんでした。今回の値上げが少なからず市民の負担になることは間違いありませんが、世界的なインフレの中で経営を続けるには仕方のない流れでしょう。特にスターフェリーとトラムは香港の物価に対して乗車料金が非常に安かったので、「香港の風景」を残すためにも多少の値上げをしてでも経営維持してほしいと望む声もあります。

現在の物価の上昇については戦争によるものと考えがちですが、コロナの流行による生活様式の変化でサービスよりモノへの需要が増えたこと、燃料価格の高騰、労働人材不足など、様々な要因が絡み合って今のインフレを引き起こしています。インフレによる物価の上昇に、人々の所得が同じように増えていれば購買意欲も湧いて良い経済効果が生まれますが、物価の上昇に所得の伸びがついていけないインフレでは生活が苦しくなってしまいます。インフレが好景気、デフレが不景気というわけでもなく、どちらも度が過ぎると需給バランスが崩れてしまうというわけです。

そして香港の不動産業界では今、SARSが流行った2003年やリーマンショックの2009年にも匹敵する市況悪化となっています。香港は世界的に不動産価格が高い都市ですが、現在は経済の縮小、借入コストの上昇、香港からの人口流出などにより、香港の不動産価格はここに来て下落傾向にあります。住宅用、オフィス共に不動産の販売価格や賃料は下落しており、来年にかけ10%は下落する予想が出ています。

そして中国では新型コロナウイルスの新規感染者数が過去最多となりました。ロックダウンなど強硬な措置を含むゼロコロナ政策に対する抗議活動が全国各地で広がり経済への影響も懸念されています。今回の抗議の動きは中国内だけでなく海外に居住する学生等へも広がり、東京やロンドンなど世界の主要都市においても抗議デモが行われました。

香港でも新型コロナウイルスの新規感染者数がやや上昇傾向にありますが、11月21日に海外と台湾からの入境者に対して入境後4日目と6日目のPCR検査が撤廃されました。そして11月18日よりツアーでの観光客に対し入境後3日間の医学的観察期間内であっても、ツアーガイドの同行があればレストランでの食事が可能となりました。しかしツアーガイドはツアーの前後にPCR検査を受け、レストランも個室であること、接客を担当する従業員はPCRを受けなければならないなど、やはり緩和の中にも各種の条件を残しています。こういった制限を残すことで中国のゼロコロナと足並みを揃えている部分もありながら、全体の緩和措置から香港はウィズコロナへ舵を切っているとも読み取ることができます。