IPOと香港の少年野球

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IPOと香港の少年野球

2026年9月1日、若者に人気の世界的ファストファッションブランドの企業SHEINが香港証券取引所に上場しました。当初目指していたロンドンやニューヨーク市場ではなく、香港市場での株式公開ということもあり話題になりました。最近の金融ニュースでよく目にするIPOとは、企業が株式を証券取引所に新規で上場し、投資家から資金を集めることをいいます。今年に入って香港ではIPO市場が活発になっています。今回、SHEINは香港IPOで約17.4億ドルを調達し、企業価値は約265億ドルと勢いのある上場を果たしました。今回SHEINは大型IPOということで大きな注目を集めましたが、初日の株価は一時10%近く下落し、市場は慎重なスタートとなりました。初日の株価こそ低調でしたが、IPOによって約17.4億ドルの資金調達に成功しています。香港では2026年に入ってIPO市場が大きく回復しており、1月から8月までのIPO調達額は約835億ドルで、前年同期と比べて76%増加しました。IPOの増加は、企業だけが恩恵を受けるわけではなく、上場に関連する投資銀行や証券会社、法律事務所、会計事務所などにも仕事が生まれます。金融業界では海外に流出していた人材が戻る動きまで出ています。香港はドバイや中東との金融連携も一層強化しており、金融都市としての今後の動きに期待が高まります。

さて今年6月、台北ではU13のリトルリーグ、アジア太平洋・中東地域大会が開催され、香港の少年野球チームが参加しました。そして優勝候補であった日本チームを相手に、香港チームが15対12で勝ちました。この勝利は、香港の少年野球にとって大きな成果です。野球が盛んな日本と違い、香港で野球はそれほど一般的なスポーツではありません。今回のように国際大会の舞台で日本やアジアのチームと対戦すること自体が、香港の野球チームにとって貴重な経験なのです。

さらに9月には、台北でU18アジア野球選手権も開催され、香港の18歳以下の代表も出場しました。香港は日本、フィリピン、スリランカと同じグループに入り、9月7日の初戦では日本と対戦しました。結果は0対18で、スコアだけを見ると厳しい結果でしたが、やはり香港選手にとっては、アジアの強豪と真剣勝負ができることに意義があったと感じます。日本のメディアや文化に親しんでいる多くの香港人にとって、野球が日本で盛んなことは周知されていますが、香港では日本のように学校の部活動や地域のチームを通じて、子どもたちが自然に野球を始める環境はありません。香港で野球選手は少なく、新しい年代が増えていかないと、チームを維持することも難しくなります。グラウンドなどの練習環境、指導者はもちろん、野球を始めてみたいと思う子どもをどう増やしていくかが一番の課題です。

そんな香港の少年野球について身近に知ることができる映画があります。「點五歩(Weeds on Fire)」という2016年の作品で、日本では今年8月21日に劇場公開されました。邦題は「最初の半歩」です。この作品は、九龍城を舞台にした大ヒット映画「トワイライト・ウォリアーズ」で十二少(サップイー)役を演じたトニー・ウー氏の俳優デビュー作としても注目されています。トニー・ウー氏は俳優であり、歌手であり、香港代表の野球選手でもあります。幼い頃から野球に親しみ、10歳で香港野球協会の青少年選抜チームに所属し、香港代表選手として数々の大会に出場しました。この映画は、1980年代に香港で結成された少年野球チームの実話を元にした作品です。野球がメジャーなスポーツではない香港で、野球未経験の少年たちがチームを結成し、練習を重ね、敗北を経験しながら強豪チームに挑んでいくという青春ストーリーです。好きなことに夢中になること、仲間と一緒に頑張ることなど、スポーツ映画の普遍的な魅力が描かれており、香港の少年野球を取り巻く環境についても知ることができます。

香港の学校にもスポーツチームやクラブ、課外活動はあり、サッカー、バスケットボール、陸上、水泳などの学校チームがあり、学校対抗の大会もあります。しかし日本のように放課後になると生徒が毎日同じ部活動のために集まり、顧問の先生が継続的に指導するという文化は香港では一般的ではありません。もし特定のスポーツに真剣に取り組みたい場合は、学校の課外活動に加えて、外部のスポーツクラブやスクールに通うという形で競技を続けるケースが多いです。野球をしたい場合、まず学校にチームがあるとは限らず、地域や民間のクラブを探し、そこで練習して代表チームや国際大会を目指すというルートになります。

一方、香港で市民に広く親しまれているスポーツといえば、生涯スポーツとして不動の人気を誇るマラソンがあります。毎年開催される「スタンダード・チャータード香港マラソン」は、香港を代表するスポーツイベントの一つで風物詩ともなっており、次回の2027年大会は1月17日(日)に開催されます。野球のように競技人口が限られているスポーツがある一方で、マラソンは年齢や経験を問わず参加しやすい「市民スポーツ」として、香港に根付いています。香港の少年野球も盛んになるよう応援したいところです。