香港の金融政策・通貨制度

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香港の金融政策・通貨制度

香港では旧正月が明けてからも引き続き新型コロナウイルスの感染者が急増しており、新規感染者が過去最多を更新するなど厳しい状況です。2021年12月末頃までゼロコロナを続けていた香港ですが、オミクロン株が確認されてから瞬く間に市中感染が広がりました。香港政府は2022年1月、コロナ関連の経済対策の第5弾として27の業種を対象とした総額およそ36億香港ドルの「防疫抗疫基金(the Anti-epidemic Fund)」を発表しました。このような助成金による政策は2020年12月の第4弾から約1年ぶりで、今回のオミクロン株による感染拡大がいかに深刻かを表しています。また同時に、助成金支給対象の業種に影響が出るほどの厳しい防疫対策を実施するということも意味しています。

中国国務院の香港マカオ事務弁公室は「ダイナミックゼロ コロナ政策(dynamic zero-infection strategy)」で香港を全面的に支援すると表明しました。日本など諸外国では「ウィズコロナ」としてウィルスと共存していく論調もありますが、中国政府は「ダイナミックゼロ」を掲げ、香港政府もこの政策に追随していく方針です。中国政府は香港における感染急拡大を懸念しており、中国から医療従事者や研究者を派遣し、数百万個の検査キットを香港に送るという計画で1日当たりの検査能力も300万件まで拡大が見込めます。「ダイナミックゼロ」は単純に感染者ゼロを追及するというものではなく、感染をできるだけ早期に封じ込めることに重点を置いたもので、言い換えれば市民生活への締め付けがより具体的で、より厳しくなるというものです。

さっそく2月10日から公共の場所での3人以上の集まりが禁止され(2人までは可)、自宅など私的な場所での家族の集まりも2組までに制限されました。もし違反した場合は罰金対象になります。そして2月24日からはワクチンパスを導入し、12歳以上で少なくとも1回のワクチン接種をしていない人は飲食店、デパート、スーパー、ホテル、イベント施設などの指定施設が利用できなくなります。また、今後は企業がワクチンの接種を拒否する従業員を解雇することを認めるという方針まで出てきました。

さて先日、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が3月に政策金利を引き上げる方針を示し、利上げの動きにシフトするとみられています。金融引き締めを急ぐ背景には、現在の記録的な高水準のインフレ状況を打開しようという狙いがあります。アメリカのこうした動きによって不安が広がり、日本や香港を含む世界中で株安が進みました。世界経済の中心であるアメリカの動き一つで各国の株価は乱高下しますが、もちろん今や経済大国の世界第2位となった中国の動向も世界的に大きな影響力を持っています。

香港は1997年の返還後も一国二制度により、香港ドル通貨が引き続き用いられています。

香港における通貨・為替制度の歴史を見てみると、かつての銀本位制から1935年に香港ドルが発行され、「英ポンド固定相場制(1英ポンド=16香港ドル)」となりました。その後、紆余曲折を経て1983年から最大貿易相手国であるアメリカとの「米ドル・ペッグ制度」に移行しました。最初は1米ドル=7.8香港ドルと固定されていましたが、2005年より1米ドル=7.75~7.85香港ドルの連動相場制となりました。「米ドル・ペッグ制」により長らく香港ドルの通貨は安定し、香港の金融政策はその維持のもとに成り立っていました。ペッグ制のメリットとして、為替の変動相場に影響されないため輸出入における為替の差損益が発生せず、安定した利益を確保することができます。これまでも香港返還など世界情勢の移り変わりが通貨に及ぼす影響を、ペッグ制は最小限に防いできました。一方でペッグ制にはデメリットもあり、金融政策の自主性が損なわれること、長期的に見た場合に適正レートから乖離することなどが挙げられます。今回のようにアメリカが金利を上げた場合に、香港の景気や金融政策にかかわらず金利を上げなければならないという状況になります。もともと「米ドル・ペッグ制」だった国でも、アメリカの利下げに自国の金利を上げられない状況になり、「米ドル・ペッグ制」を廃止したという例もあります。

また香港ドルの値動きで言うと、アメリカの経済動向だけではなく、中国の景気動向も大きく連動しています。中国へ返還されてからここ20年ほどの香港の経済成長は、中国の景気に伴って動いているのが分かると思います。

香港は政治面において「一国二制度」の在り方が問われるようになり、この2,3年のうち社会情勢に大きな変化がありました。それでも経済面において香港は、依然として世界屈指の国際都市・金融都市であり続けています。中国にとって香港は、中国と世界をつなぐ窓口であり、外国企業も中国への投資の大半は香港を経由しています。多くの中国企業は香港を通じて資金調達しており、香港の金融セクターとしての重要性は今もなお存在感があると言えるでしょう。