国連開発計画（UNDP）が2025年5月6日に公表した「人間開発指数（Human Development Index, HDI）」において、香港は世界で8位という結果でした。人間開発指数(HDI)とは、各国ごとの社会の豊かさや進歩を測る指標で、「健康」「教育」「生活水準」の3つの指標を組み合わせて総合的に人間の発展度を評価します。「健康」は平均寿命、「教育」は就学年数や教育の機会などの指数、「生活水準」は国民総所得（GNI）を用いて算出されます。0から1の間の数値で表示され、1に近いほど人間開発が進んでいることを示します。
2025年「人間開発指数（HDI）」ランキング
1位：アイスランド(0.972)
2位：ノルウェー(0.970)
2位：スイス(0.970)
4位：デンマーク(0.962)
5位：ドイツ(0.959)
5位：スウェーデン(0.959)
7位：オーストラリア(0.958)
8位：香港(0.955)
8位：オランダ(0.955)
10位：ベルギー(0.951)
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23位：日本（0.93）
2024年のランキングで香港は世界4位（0.956）で、今年は順位を落としたものの依然としてトップ10に入っており、非常に高いレベルの先進国（地域）であると言えます。またランキング結果のように上位をヨーロッパ諸国が占めている中で、アジアからは香港だけが突出して高い人間開発を達成していることが分かります。人間開発指数（HDI）の要素となっている香港の「健康」「教育」「生活水準」について、具体的に見ていきましょう。
＜健康＞
香港は世界でも平均寿命が長い地域として知られています。2024年のデータでは男性の平均寿命は83歳、女性の平均寿命は89歳でいずれも世界１位です。世界一の平均寿命を持つその背景には香港ならではの多様な要因があります。
・医療が充実している
香港は高度な医療インフラ、世界レベルの医療システムが整っています。公立病院や私立病院、民間のクリニックなど病院の数が多く幅広い選択肢があり、誰でも高度な医療を受けることが可能です。公立病院は待ち時間が長くなるのはデメリットですが、医療費の個人負担は少なく、高い水準の医療を受けることができます。私立病院は高額ですが公立病院ほどの待ち時間はなく質の高いサービスを受けられます。
・健康的な生活習慣
お金と同様に身体も資本と捉える香港の人々にとって、健康への投資は惜しみなく、健康に対する関心は非常に強い傾向にあります。医食同源の考えから、日ごろから体調に合った食材を摂るよう心掛けています。どの食材がどの症状に効くなど、小さい頃から周りの大人たちが言う環境で育つので、自然と健康の知識を身につけていきます。また交通インフラの整っている香港は公共交通機関を利用する機会が多く、コンパクトな都市であるため移動手段として街中を歩くことも多く、自然と足腰が鍛えられます。都会でありながら緑に囲まれた公園も充実しており、高齢者が早朝から太極拳をする姿が見られ、また治安が良いので夜間でもウォーキングやジョギングをする姿が見られます。
・心の健康
香港は多文化社会で、多種多様な文化が共存しています。異文化交流を通じて多様性に富んだ視点を持つことができます。日本を単一民族による閉鎖的な社会とするなら、香港はその逆で、多様性が容認される社会は心の健康を促進し、自分らしい生活を送ることができます。都会生活はストレスが大きい印象ですが、リラクゼーションの選択肢が多いのも都会ならではです。
＜教育＞
香港は教育レベルが高く、アジアでもトップレベルで高い識字率、高い大学進学率を誇ります。アジアでトップクラスの大学が香港には多数あり、香港大学、香港中文大学、香港科技大学などが有名です。知識は自己投資と捉える姿勢を持っており、知識を得ることはさらに豊かな人生を過ごせることに繋がると考えます。社会人になっても積極的に学ぶ人が多く、社会人向けの教育の機会も充実しています。学力の高さは学力重視社会という裏返しでもあり、年々早くなる早期教育は胎児教育にまでエスカレートし、詰め込み教育、親の子に対する過度な期待が子のストレスや性格形成に影響がでると近年は問題視されてきました。そのため最近ではそれまで重要視されてこなかった協調性やコミュニケーション能力、創造力などの育成も重視されるようになってきています。
＜生活水準＞
香港の2024年の国民総所得（GNI）は、前年比7.5%増の3兆4778億香港ドルでした。これは、域内総生産（GDP）の3兆1770億香港ドルを上回る数字です。GNIは香港居民が経済活動に従事して得た所得の合計で算出されます。これは世界的にみて高水準です。実際の生活水準は個人差によるとことが大きいものの、全体的に見て香港は裕福な地域でしょう。平均月収は20000～30000香港ドル、業種や経験により幅がありますがおよそ平均的な一人当たりの月収です。香港は住居費が高いので、収入のおよそ半分を住居費用が占めます。交通費は比較的リーズナブルですが全体的に物価も高く、昨今は物価が上がり続けているので収支バランスによって生活の質は左右されます。
