3月の香港はアートイベントが集中する季節です。3月はArt Month(藝術三月)とも呼ばれ、アートフェア、ギャラリー展示、パフォーマンスアートなど様々イベントが一斉に開催されます。
まず、その代表と言えるのが次の3つのイベントです。
・Art Basel Hong Kong・
・3月27日~29日に湾仔のコンベンション&エキシビションセンターで開催される世界的アートフェアです。スイス・バーゼル発祥のアートフェアのアジア版で、世界中の美術関係者が訪れます。41か国以上から約240のギャラリーが集結、現代美術や写真、デジタルアート、映像作品など幅広い作品が展示されます。作品展示の他にも、アーティストのトークイベント、ダンスパフォーマンスも行われます。
・Art Central・
・3月25日~29日に、中環のハーバーフロント内イベントスペースで開催される若手アーティストの作品が中心のイベントです。Art Baselが世界のトップアーティストが中心なのに対して、Art Centralは若手アーティストによる実験的な作品が多く、インスタレーション作品、パフォーマンス、トークイベントが豊富なのも特徴で、新世代の発掘が期待されています。
・ComplexCon Hong Kong・
・3月21日~22日に、アジア・ワールド・エキスポで開催される世界的ポップカルチャー、ストリートカルチャーの大規模イベントです。若者文化を中心として、アート、音楽、ファッション、スニーカー、ブランド、フードなどを網羅し、2016年にアメリカで始まりました。香港では2024年から開催され、香港はアジア拠点の開催都市となっています。特にスニーカーやTシャツは各ブランドから限定商品が販売されることもあり、コレクター達から注目されています。
また香港では各種アートフェアにとどまらず、香港市内の美術館や文化施設も同時に特別展示を開催するため、3月は街全体が美術館のように変貌します。M+ミュージアム、アジア・アート・アーカイブ、香港芸術館、パラ・サイト・アートスペースなどの施設で、現代アートからアジア美術までさまざまな展示が行われます。特にギャラリーが多い中環や上環エリアでは、複数のギャラリーが同時に展覧会を開催します。近年は街歩き型のアートイベントや屋外展示ツアーなどもあり、その規模は年々拡大していて、アート好きにとって3月の香港は特に面白い季節となるでしょう。
さて、香港でアートが盛んなのはなぜでしょうか。その理由として、香港の歴史的背景、国際都市、地理的要因などの理由が挙げられます。
まず歴史的背景について、香港はイギリスの植民地時代に東西の文化が混ざり合う独特の環境が形成されました。香港返還以降も比較的自由な文化活動が認められていることもあり、海外アーティストにとって活動しやすい開かれた環境が整っています。
国際都市であることもアート市場が強い理由の一つです。香港は金融、貿易の中心地として世界中の人々や企業が集まり、それにより異文化交流も活発です。国際金融都市としてのネットワークが文化的なネットワークの拡大に繋がっていると言えるでしょう。
アジアと欧米をつなぐ地理的な条件も重要です。香港は関税が低く、作品の輸出入も自由であるため、アートの取引がしやすいためChristie’sやSotheby’sといった世界的に大規模なオークションも香港で開催されています。現代アートから古美術まで、様々な作品が売買されており、中国をはじめアジア各国の富裕層のコレクターにとって香港はアクセスしやすく、高額なアート作品が取引されています。この巨大マーケットが多数のアーティストを香港に引き寄せる要因の一つになっています。
香港政府は近年アートに特に力を入れており、文化施設の整備も進んでいます。西九龍文化地区の開発によって、香港はアート都市としての存在感を世界に印象づけました。香港は作品を売買するマーケットだけでなく、文化を発信する都市としての役割も強めています。世界中のギャラリーやコレクターが集まり、「アジアのアートハブ」としての役割を果たすべく進化しています。
また、コレクターの世代交代も進んでいます。Z世代の若いコレクターが増え、若いアーティストやアジア出身の作家に注目が集まるようになってきました。作品の価格帯も高額の作品だけでなく、中価格帯の作品がよく売れるようになり、市場の広がりが見られます。中国で増える新しいコレクターたちの購買力は、今後も香港市場に大きな影響を与えると考えられます。香港は東西の市場をつなぐゲートウェイとしての役割を担う他、アジアの他都市との競争も見逃せません。近年は韓国のソウルやシンガポールもアート市場として急速に成長しており、香港もこれらの都市と並ぶ存在になっています。国際フェアや文化施設、観光と結びついた都市戦略など、アートを中心とした都市ブランドづくりがますます重要になっています。国際アートフェア、オークション市場、文化施設、そしてアジアのコレクターという要素が組み合わさって、香港はアジアのアートシーンの中心であり続けています。今後、アート市場がさらに成長していく中で、香港がどのような位置を築いていくのか、引き続き注目していきたいところです。