香港政府はクレーンゲームなど景品付きアミューズメントゲームを規制対象にする方向で検討を始めました。香港でも人気のクレーンゲームは、若者へのゲーム依存やギャンブル化への懸念が持たれています。「市民がこれらの娯楽を安全に楽しめるよう、関連施設が適切に規制されていることを確認し、関連法も見直す」として、潜在的な中毒リスクを伴うゲーム機器の全てに個別のライセンスを義務付けるため、賭博条例と賭博規制の改正を提案しました。事業者は、店舗入り口に明確なライセンス表示を掲示すること、また中毒リスクへの警告も表示する方向で検討しています。
また5月11日に香港当局は、無許可で簡易宿泊施設化しているネットカフェを起訴すると発表しました。今月初めのゴールデンウィーク期間中に、ホテル代節約のためネットカフェで寝泊まりする観光客が急増したことが取り締まりに踏み切ったきっかけです。香港ではネットカフェが宿泊営業をする場合、宿泊施設の営業ライセンスが必要ですが、実際にはパソコンブースで寝る利用客が多くみられるという声が多数寄せられたことから実態調査が行われました。規制として検討されている内容は、ライセンス制の導入、宿泊の禁止、学生の利用制限、防火・換気基準の強化などがあります。関係者からは、単なるネットカフェではなくeスポーツ施設として再定義すべきだという主張もあり、近年スマホの普及から従来のようにインターネット利用だけをメインの目的とする客層は減少していることから、ネットカフェを現行のeスポーツ会場に適用されているような免除制度を参考にしてはどうかという意見が出ています。
香港のネットカフェはもともと、日本のような漫画喫茶にパソコン設備が付随した形態とは違い、当初から若者向けのパソコンゲーム施設として発展しました。狭い空間に高性能パソコンが並び、FPSやMOBA系ゲームを遊ぶ「ゲーミング空間」の色合いが強い場所でした。しかし近年は少しずつ様相が変わってきて、現在のネットカフェには個室タイプもあり、ソファベッド、シャワー、洗濯設備まで備えた施設が見られ、一泊200香港ドルほどで一晩滞在できるなど事実上、安宿化している様子が伺えます。香港のホテル代は非常に高いため、節約志向の観光客がネットカフェを利用するようになりました。またネットカフェ難民も問題になっています。香港の高騰する不動産事情から、低所得層が24時間営業のネットカフェを居住空間として利用するケースも見られ、日本のネットカフェ難民に近い現象が香港でも起こっています。香港政府は今後、ネットカフェに対して年齢制限や営業許可制度を導入する方向で議論を進めています。
近年の香港においてギャンブルやネットカフェの存在は、都市の経済格差や生活不安を映す存在として注目されています。この二つは香港社会の裏側を象徴するテーマとして、メディアでも度々取り上げられています。香港のギャンブル事情は非常に独特で、合法賭博はかなり限定されています。大衆娯楽の一つである麻雀も、営利目的ではなく自宅などで家族や友人と遊ぶ場合は合法ですが、公園など公共の場所で金銭を賭けてプレイすると違法です。街中にある雀荘はライセンスを取得して営業しているため合法ですが、ライセンスの無い雀荘でプレイすることは摘発対象になります。その他、香港での合法賭博として代表的なのは競馬、サッカーくじ、宝くじです。これらほぼ全てを香港ジョッキークラブが独占運営しています。特に競馬は香港文化の一部と言える存在で、沙田競馬場やハッピーバレー競馬場には毎週多くの観客が集まります。香港の競馬は単なるギャンブルというよりは、イギリス統治時代に根付いたイギリスの伝統文化でもあり、貴族の社交場という一面があります。そして金融都市の香港らしい投機の文化とも強く結びついています。香港人の中には、株投資と競馬予想を近い感覚で捉える人も多く、現在はスマホのアプリ経由で簡単に賭けられる手軽さから、若年層の利用も広がっています。
近年は、違法オンライン賭博や地下カジノへの警戒も強まっています。香港には合法カジノが存在しないため、多くの人は近隣のマカオでカジノを楽しみます。しかし最近は、オンラインカジノや暗号資産を利用した違法賭博が急増しており、警察の摘発対象となっています。これと同様の見方で、今回のクレーンゲームも事実上は賭博化していると問題視されることになりました。高額景品を置いたり、サイコロ賭博に近い営業を行ったりする店舗もあるため、政府は全面的な規制強化に乗り出しました。
香港では「ギャンブル依存」も社会問題化しています。景気低迷と若者の将来不安の中で、一発逆転の志向が強まり、オンライン賭博やスポーツベッティングに興味を持つ人が増えています。香港といえば世界有数の金融都市、高層ビル、最先端の街、富裕層が多い、というイメージが強い一方で、実際には住宅難、格差、依存症、違法営業といった課題も多く存在しており、解決に向けた対策が必要になっています。