香港の暮らしを支える「メイドさん」事情 — 2026年最新の賃金改定と雇用・共生のポイント

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香港の暮らしを支える「メイドさん」事情 — 2026年最新の賃金改定と雇用・共生のポイント

2026年10月2日、香港政府は外国人家事労働者(Foreign Domestic Helpers/FDH)の最低許容賃金を、月額5,100香港ドルから5,220香港ドルへ引き上げると発表しました。引き上げ幅は約2.35%、月額にして120香港ドルです。10月3日以降に結ぶ雇用契約から適用されます。食事を無償で提供しない場合の食費手当は、月額1,236香港ドル以上のまま据え置かれました。なお、この賃金は一般の労働者に適用されている最低賃金とは別で、外国人家事労働者向けに定められたものです。雇用主は、契約で定めた賃金を支払い、食事の提供または所定の食費手当の支給をする義務があります。

香港では住み込みの外国人家事労働者である「メイドさん」が活躍しています。メイドさんは掃除や洗濯、料理などの家事全般、赤ちゃんの世話、幼稚園や小学校に通う子どもの送迎、高齢者の介助やペットの世話まで、それぞれの家庭によって異なるニーズに応じ、日常生活を支える役割を担っています。香港は住宅費や生活費が高く共働き世帯が多いため、仕事と育児を両立するうえでメイドさんの存在は大きな助けになっています。特に、小さな子どもがいる家庭などで、近くに頼れる身内がいない場合は、一緒に育児をしてくれるメイドさんは心強い味方です。日本でも共働きが当たり前になり、家事代行やベビーシッターを使う家庭が増えましたが、利用は必要な時だけという場合が大半です。一方の香港ではメイドさんを住み込みで雇う仕組みが広く定着しています。

香港で働くメイドさんの多くはフィリピンやインドネシアの出身で、この2か国だけでメイドさん全体の95%を上回っています。通常の就労ビザとは異なるForeign Domestic Helper Visa(外国人家事労働者ビザ)を取得して働きます。契約期間は原則2年で、雇用主の住居に住み込み、契約した雇用主の家庭でのみ働くのが原則です。香港で収入を得て母国の家族に仕送りできることは、メイドさん側にとっても大きなメリットです。一方で、住居と職場が同じため、仕事と私生活の境目が曖昧になりやすい面もあります。

メイドさんの雇用にあたっては、一般的に仲介業者を通します。契約内容について雇用主とメイドさんの双方は、正しく理解しておく必要があります。香港政府は2026年5月、外国人家事労働者の仲介業者に対する監督強化について立法会で説明しました。香港消費者委員会には毎年100件を超える苦情が寄せられ、例えば雇用開始の予定日にメイドさんが着任しない、紹介された人材の能力が期待に及ばない、といったトラブルが目立ちます。政府は仲介業者に、サービス内容や手数料、返金・代替紹介の条件を契約書で明確にするよう求めています。雇用する側は、料金や返金条件が不明瞭なら契約前に説明を求め、契約書や領収書を保管しておくと安心です。メイドさん側も契約内容をよく理解し、困ったときの相談窓口を知っておくことが、自分の権利を守ることに繋がります。

雇用契約や労働関係法令に基づく権利について、代表的なものは次の通りです。

休息日:原則として7日ごとに少なくとも1日

賃金:契約で定めた賃金の全額を受け取る権利がある

食事:食事の無償提供、または所定の食費手当の支給

安全:安全な環境で働く権利がある(窓の外側を清掃させる場合は、格子を固定して身を乗り出させないなど、安全条件を守る必要があります)

そして、香港のメイドさんを語るうえで欠かせないのが、休日の過ごし方です。毎週、日曜日になるとセントラル周辺では、多くのフィリピン出身のメイドさんたちが、歩道や高架下に段ボールを敷いて座り、持ち寄った料理を囲んで、おしゃべりやダンスを楽しんだりする姿が見られます。金融の中心地が休日にはメイドさんたちの交流の場に変わる光景は、香港ならではです。コーズウェイベイのビクトリアパーク周辺は、インドネシア出身のメイドさんたちが多く、同じく同郷の仲間たちと集まって過ごす場所として親しまれています。同じ言葉や文化を分かち合う仲間との時間は、異国で生活するメイドさんたちにとってリラックスできる貴重なひとときです。雇用主はメイドさんの休息日を尊重し、週に1日はメイドさんがいないことを前提に、自分たち家族の予定や子どもの世話、食事の準備を考える必要があります。雇用主とメイドさんの関係作りはとても大切です。メイドさんのことを一人の生活者として理解することが、良い関係を築く土台になります。

メイドさんによって仕事への姿勢や得意分野には個人差がありますが、とても優しくフレンドリーな方が多い印象です。小さな子どもを我が子のように可愛がり、高齢者には自分の親のように声をかける姿には、仕事としての義務を超えたホスピタリティを感じます。日頃から雇用主はメイドさんに感謝を伝えること、希望は具体的に伝えることが大切です。そうすることでお互いに安心して暮らせる家庭環境を作ることができます。メイドさんは香港のそれぞれの家庭を支える労働力であり、ひいては国際都市・香港の暮らしを支えている大切な存在なのです。