コロナ禍における香港の外食文化

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コロナ禍における香港の外食文化

この時期の香港は連日、気温30度~35度が続いています。日本では本州の各地で気温35度~40度を記録しており、気温だけを比較すると8月は日本の方がずっと暑いことがわかります。ただ香港は日本よりも湿度が高く蒸し暑いので、実際の不快指数は香港の方が上でしょう。加えて香港は5月~10月頃まで気温の高い時期が長く続くため、香港の方がとにかく暑いという印象があるのではないでしょうか。香港はビーチも近くにあり、泳げる季節が長いためマリンスポーツも盛んですが、今年は新型コロナウィルスの影響で各所のビーチはどこも閉鎖しています。

8月13日における新型コロナウイルスの新規感染者は4244人を記録しました。そのうちすでに退院したのが3189人、現在入院中が903人となっています。香港では9月下旬の中秋節まで大型連休はありませんが、人の移動に伴う新型コロナウイルスの感染拡大防止と、市民の社会活動をうまく両立させる方法を模索している状態です。

香港政府が7月29日から実施していた「店内飲食の終日禁止措置」はわずか2日後の7月31日に撤回されました。撤回後は禁止措置の内容を変更し、「終日」ではなく「午後6時~午前5時まで」の店内飲食が禁止となりました。措置を実施後、多くの市民が外食する場所に困り、路上で食事をするなど予想以上の不都合が発覚したことが主な理由でした。政府は在宅勤務を推奨していますが、実際には建築関係など在宅勤務ができない業種も多くあります。実施後に市民の猛烈なクレームを受け、即座に措置を撤回するという対応の速さはまさに香港スタイルですね。

香港では外食を利用する人が多く、朝昼夕の3食に加え午後のティータイムや、夜食に至るまで外食で済ますことができます。この背景には共働き家庭が多く家で料理を作る習慣がないこと、飲食店が多数あり利用しやすいこと、外食がリーズナブルであること、飲食店の営業時間が長いことが考えられます。香港といえば世界的にグルメの都と言われていますが、様々な国の料理を気軽に楽しめるのが特徴でしょう。気軽に海外を行き来できないこの時期でも、香港では本場に負けない各国料理を楽しむことができます。日本から飲食店の進出も活発で、最近では新たにすき家が2店舗できました。

フードコートも近年、目まぐるしい変化を遂げています。シンガポール発の大型チェーンFood Republic(大食代)は香港でも名の知れたフードコートで、尖沙咀、旺角、油塘、奥運、など香港内の各所にあります。Eaton Hotel、Kelly Hotelなどフードコートを併設しているホテルもあり、宿泊客以外も気軽に利用できます。6月に中環のジャーディンハウスにオープンした「Baseholl」は、レストランとバーを取り入れた斬新なフードコートです。中環は香港を代表するオフィス街ですが、高級レストランなど一流の飲食店が揃う一方で、フードコートという形態は今までありませんでした。Basehollには10店舗が入り、うちレストランが8店舗、バーが2店舗です。素材にこだわったハンバーガーのお店、メキシコ料理、ベトナム料理、ベジタリアン料理など、中環エリアで働く人々が多国籍であることから幅広い客層を狙っています。営業時間も夜10時までと、ランチだけでなく夕方からバーでお酒を楽しむこともできます。

ところで、7月末にイギリスの不動産会社「Savills」が香港の不動産価格がニューヨークや東京を超えて世界一である発表しました。香港だけで見ると、昨年からの政治情勢や今年の新型コロナウイルスの影響で市場は下がりましたが、世界的に見ると香港の不動産価格は依然として高止まりしており世界一を維持している状態です。

狭い土地を有効活用するため香港では以前から積極的に、古い建物を保存しつつ現在の建築基準に合わせて改築、再利用する計画が進められています。上環の「PMQ」は旧警察宿舎が、中環の「大館(Taikoon)」は旧監獄・警察署が、文化とアートの発信地に生まれ変わりました。尖沙咀にある「1881Herritage」は香港水上警察の建物がショッピングモールになりました。旺角にある「618上海街」は広州式の騎楼と呼ばれるアーケード式の建築様式で、改築後もレトロな雰囲気を残しています。

香港には古くなった集合住宅やビル、リゾート地など遊ばせておくには勿体ない場所が他にも多数あります。古い建物は倒壊の危険もあるため取り壊しもやむを得ませんが、歴史的価値のある建物はなるべく保存されています。北角にある「皇都戲院大廈(Empire Theatre Building)」は数年前から保存か取り壊しかで議論されていました。このビルは戦後の1952年に建てられた当時最新の建築技術を用いたアーチ型のトラスがモダンな映画館で、のちにショッピングモールと住宅マンションが増築され、このエリアにおけるランドマーク的な存在でした。上部にはめられた三國志のレリーフがトラムからもはっきりと見えるので、気になった方も多いと思います。議論の末に一級歴史建造物と認定されたので、再開発で生まれ変わっても完全な取り壊しは免れそうです。本格的に改修が始まる前に、もし近くを通りかかったら是非立ち寄ってみてくださいね。