香港版センター試験

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香港版センター試験

日本は今までと全く異なる「Stay home」の大型連休に突入です。香港も落ち着いてきてはいますが、まだまだここで気を抜いてはいけない大事な局面となっております。さて、今回はそんな香港の新型コロナ対策とその効果について発信させて頂きます。

4月28日現在、香港内の新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数は1038人、そのうち入院中が247人、退院者数は787人となっています。香港ではこの2週間ほど、1日あたりの新たな感染者の数が1桁となっており、直近の1週間では0人という日が3日ありました。香港は確実に感染拡大を食い止めている状況で、感染予防のための各種制限措置「公共の場における4人以上での集会の禁止」や「入境者の14日間の強制検疫」は5月7日までとなっていますが、さらに期間を延長するか解除するかどうかについて現在、政府内で検討されています。しかしながら、専門家によると感染者数が減少したといってもやはり油断は禁物で、中国本土がゴールデンウィークに入ることもあり、中国本土からの入境制限を緩和するには慎重な判断が必要ということです。また、いったん退院した新型コロナウィルスの患者が再び陽性になるケースもあるため、退院した後の健康観察も必要とされ、安心するにはまだ早いという声があります。

さて、香港では新型コロナウィルスの影響で各種学校も休校が続いていますが、「DSE2020」が4月24日から始まりました。DSEは“Hong Kong Diploma Of Secondary Education”の略で、中国語では「香港文憑試」です。毎年この時期に実施される香港の試験で、日本のセンター試験(2021年からは「大学入学共通テスト」)に近いものです。香港では大学独自の入学試験が存在せず、学生は全員この試験を受け、その結果で進学先が決まります。学歴社会の香港で、このDSE試験は人生の分かれ道ということもあり、学生だけでなく保護者も非常に神経質になる時期です。今年は1月から新型コロナウィルスで学校が休校となり、試験の日程もなかなか確定せず、受験生たちは不安な日々を過ごしていたことでしょう。試験会場では座席と座席の間隔をあけ、換気などの予防措置が取られたようですが、初日には発熱や呼吸器の症状があったため試験会場に入れなかった受験生もいたようです。

新型コロナウィルスの感染拡大が少し落ち着いた一方で、4月26日(日曜日)には香港島の太古(Taikoo)にある商業施設において民主化を求める若者たちによる数百人規模のデモが行われ、「4人以上の集会禁止」に違反するということで香港警察により排除されました。デモ自体は歌を歌うなど平和的だったということですが、4月18日に政治家や実業家など民主派の活動家たち15人が一斉逮捕されており、その抗議のためのデモだったようです。5月1日(金曜日)のデモ行進の申請も出されていますが、警察は新型コロナウィルスの感染拡大防止を理由に申請を拒否しています。他にも、大学生を中心とした若者がバスなど公共交通機関やビルのエレベーターなどにスローガンを書いたポスターを貼り付ける活動が行われるなど、下火になっていたデモ活動が再燃してきています。

このように香港で昨年6月から発生している大規模デモや、今年に入ってからの新型コロナウィルスの影響で香港でのビジネス環境は長期的に不安定な状況が続いています。香港の飲食店やアパレルショップなど小売店は、昨年のデモの時は観光客が減少しても何とか持ちこたえていましたが、今年に入って新型コロナウィルスの影響により観光客や市民の消費が激減し、売り上げ減少にさらに追い打ちをかける形となりました。香港は家賃が非常に高いことからテナント料が払えなくなり従業員の解雇から休業へ、そして最終的に店を閉めてしまうケースが後を絶ちません。香港政府は各業界に対して手厚い補償を政策として打ち出しており、「防疫抗疫基金」から従業員向けの給与補填、中小規模店舗への融資額の増額など助成をしていますが、小売店の場合は補償を手にするまで店が持たず閉店に踏み切ってしまうのが現状です。

香港の産業で大きなウェイトを占める観光業では、水際対策による観光客の激減により旅行会社やホテルが軒並み赤字です。4月18日から申請の受付が始まった「旅行代理店及びフリーランス支援計画」では旅行代理店約1730店舗、フリーランスで働くライセンスを所持した観光ガイド、ツアーガイドなど約2万6000人が対象です。同時に「ホテル業支援計画」の申請受付も始まり、およそ300軒のホテルが上限40万香港ドルの補助を受けられます。

香港人に言わせれば香港政府の対応には不満もあり批判の声が度々上がっていますが、混迷する日本の現状と比べてみると、香港の大胆な水際対策や、早期からの休校措置、在宅勤務の勧め、市民生活への各種規制、そして各方面への財政支援への素早い判断は、いずれも効果を発揮していると思います。何より、香港在住の市民ひとり一人が意識を高く持って感染予防に取り組んでいることによる効果が大きいのではないでしょうか。香港におけるここ最近の感染者の減少は、まだ予断を許さないといえども、少し明るい兆しが見えてきたことで株価や不動産は若干ですが回復してきました。前向きな経済活動が再開される日を信じてこの時期を乗り越えていきましょう。