香港のIT化社会

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香港のIT化社会

香港における新型コロナウィルスの感染者数は減速しており、ここ最近診断された感染者はパキスタンや西アフリカなど海外からの帰国者でした。6月28日現在、香港での感染者数は1,200人、うち1,104人が退院しており、87人が入院中です。

政府は、今年2月20日から検疫センターとして利用してきた火炭(Fo Tan)にある新築の公営住宅であった駿洋邨(Chun Yeung Estate)について、検疫センターとしての利用を7月末で終了することを発表しました。駿洋邨は建物内の消毒を終え次第、香港住宅委員会に返却され、入居待ちをしていた市民が8月~10月にかけ入居する予定です。

現在ランタオ島のディズニーリゾートが位置する竹篙灣(Penny’s Bay)において建設中の検疫センターは7月末から順次完成する予定で、今後は駿洋邨に代わって竹篙灣が海外から帰国した感染者及び濃厚接触者などの受け入れ先となる予定です。

さて、今年2月に予算が可決していた18歳以上の香港永久居民に対する1万香港ドル(約14万円)の定額給付金は、6月21日から支給申請が始まりました。申請期間は2020年6月21日~2021年12月31日で、支給は2020年7月8日からです。香港内の指定された銀行に個人名義の口座があれば、銀行のホームページからオンライン申請が可能で、審査のあと申請が通ればその口座に1万香港ドルが直接振り込まれます。

実際にオンライン申請を行った方ならご存じでしょうが、申請手続きは驚くほど簡単です。例えばHSBC銀行の場合、インターネットバンキング利用時と同様に銀行のホームページからログインし、あとは電話番号を入力するだけで完了です。もちろんオンラインの環境がない人は書面での申請も可能で、銀行口座を持っていなければ香港郵政から小切手で受け取ることもできます。オンライン申請は手続きも簡単で給付金の受け取りが1週間で可能ということもあって、一般的にはオンライン申請が推奨されています。

先日の「60回洗える高機能CUマスク」の配布においても、政府のウェブサイトからオンライン申請が可能で、申請後は迅速に配布されました。また香港は6月30日(火)より、香港で生産された使い捨てマスク10枚が別途配布される予定です。今回の配布に申請は必要なく、郵便局から各住所に配達されるとのことで、郵便受けがなく不在である場合は28営業日以内に郵便局へ行くと受け取れます。

こういった香港のIT活用が効果的なのは今に始まったことではなく、公的な各種手続きや申請などは以前からオンラインを有効活用してきました。市民もその生活に慣れているので、一部の必要な人への受け皿として紙ベースのアナログな手続き方法もあるものの、香港ではオンラインを利用する方法が主流となっています。

香港のIT化、オンライン化がいち早く進んでいる背景のひとつに、香港IDカードの優れたシステムが挙げられます。香港では180日以上の滞在を許可された、満11歳以上の人は香港IDカード(Hong Kong Identity Card)を外出する際に携帯する義務があります。日本の場合、健康保険証、運転免許証、パスポート等が身分証明として使われますが、これらは番号が変わる可能性もあり、誰もが必ず取得しているものではありません。香港IDカードは唯一の個人が特定できる身分証明であり、顔写真や指紋も内蔵のICチップにデータとして登録されています。そのためパスポートのように香港の出入境にも利用でき、また銀行の口座開設、所得税申告、不動産の購入などあらゆる場面での身分証明となります。今回の給付金申請が自分の銀行口座から行えたのも、銀行口座と香港IDカードの個人情報が紐づいているからに他なりません。

日本でも在宅勤務を強いられたことでオンライン会議が日常となり、従来の通勤や出張の必要性が問われるようになりました。働き方の変化だけでなくオンライン学習、オンライン飲み会、オンライン帰省、アーティストによるオンラインコンサートなど、大きく社会が変わってきました。

例えば在香港日本総領事館はこの6月中、4回にわたって日本文化のオンラインセミナーを開催しました。観光目的で日本と香港の往来ができない今、文化交流を目的として企画された背景があります。第一回目は和太鼓のパフォーマンス、第二回目は生け花の講座、第三回目はけん玉のパフォーマンス、第四回目は伝統工芸「つまみ細工」のセミナーで、それぞれ各分野において活躍する有資格者の香港人が広東語で解説し、香港人にとって理解しやすく内容の充実したものでした。

こういった流れを新たなビジネスモデルとして捉えると、世の中のほとんどのことはオンラインに置き換えることも可能で、オンラインならではのメリットが大きい事に気づかされます。もちろんリモートで代替できないこともありますが、リモートを活用してこそ生まれることもあり、こうした社会の動きは今後も様々な分野で新しいビジネスの可能性を秘めていると言えるでしょう。