香港スタッフの人材事情

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香港スタッフの人材事情

香港政府統計処によると、今年2~4月の香港の失業率(季節調節済、速報値)は6.4%でした。前期(1~3月)よりも0.4ポイント下回り、2期連続の改善となっています。香港では新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いてきており、個人消費・観光関連(小売り、宿泊、飲食など)の失業率は約1年ぶりに1桁へと下がりました。今後も徐々に改善していくことが期待できます。

さて、日本の働き方は終身雇用の崩壊など少しずつ変わって来ていますが、今回は香港の働き方、人材について取り上げたいと思います。香港で働く日本人の皆さんの周りにいる香港人スタッフのことをより深く理解するヒントになればと思います。

<明確な新卒採用がない>
日本は新卒で就職し、一つの企業で昇進しながら定年退職まで勤めるという環境です。対して香港は明確な新卒採用を行っておらず、企業が出す求人に対して新卒でも転職者でも応募することができます。そもそも企業側も何の経験もない若者を将来性だけで採用するのではなく、実際に空いている特定のポジションに見合った職務経験のある人を募集しています。学生さんは在学中からインターンなどで多少の仕事経験を積むとスムーズに就職できます。また、新卒が必ずしも重宝されないのと同時に、年齢が採用の絶対条件になることはありません。履歴書には年齢や生年月日を書く欄すら無く、面接官も応募者に年齢をわざわざ聞きません。日本人はつい年齢を聞いてしまいますが、特に相手が女性の場合は不必要に年齢を聞くと嫌な顔をされます。

<転職でキャリアアップ>
日本では同じ企業に長くいると昇進するものですが、香港の場合そうとも限りません。多くは転職を繰り返してキャリアを積み、給料を上げていきます。一つのポジションにおける仕事内容や給与は天井が決まっており、そこで得た経験を糧に、転職を視野に入れて次のステップへ進みます。同じ会社に長くいることは、ヘッドハンディングの声がかからず、転職する実力が足りないという見方をされてしまいます。

<長く続けるケース>
会社側としては、良い人材にはなるべく長く働いて欲しいと思うものです。もちろん香港人の中にも転職が少なく、長期に渡って同じ会社にいる人もいます。よほどその会社が気に入っているか、待遇に満足しているかでしょう。長くいてもらうためには、転職するよりも残りたいと思わせる仕事環境を作り、こまめな待遇の見直しが必要です。また、転職文化とはいえ、香港人は20代~30代に転職を繰り返してキャリアを積んでいき、40代を過ぎると最終的にどこかの会社の管理職などに落ち着く人が多いです。

<投資や副業をしている>
香港人の従業員がもし仕事中にスマホで株取引をしていたら、どう思うでしょうか。自分のビジネスに関する電話の相手と話していたらどうでしょう。会社勤めをしている以上、勤務時間内に会社の仕事と関係のないことをするのはルール違反かもしれません。ただ、香港人の多くが本業の他に副業として自分のビジネスを持っていることを知っておく必要はあります。彼らは仕事の後や週末などを使って、副業をして会社の給与以外にも収入源を持っています。会社だけに頼らず自分の実力で稼ぐバイタリティは、会社に守られてきた多くの日本人に欠けている部分かもしれません。コネ社会の強い香港では副業によって得られた人脈から本業に利益をもたらすこともあります。やることをきちんとやって本業に影響がなければ、会社も容認しているのが現状です。

一概には言えませんが、典型的な香港人の特徴を紹介します。

時間を守る:
プライベートの約束だと遅刻しがちな香港人ですが、仕事に関しては時間を守ります。朝は早めに来ることもなく定時に出社し、ダラダラ残業することもなく定時で帰ります。

指示に正確:
在庫管理、書類作成など、最初にきちんと教えればその通り完璧に仕上げます。
ただ、教えたこと以上のことはしません。自分は意見する立場ではない、それは自分の仕事ではないと思っています。

責任範囲が明確:
何かトラブルが起きた時、自分の責任でないと分かれば干渉しません。香港は仕事もチームプレイではなく個人プレイなので、他の人と仕事をシェアさせるとやりにくくなります。そのため担当者が休むと仕事が滞ることもあります。

家族を大切にする:
香港人は家族を大切にしている人が多いので、仕事のために家庭が犠牲になることを嫌います。今はコロナで外食も減りましたが、業務時間外に食事に誘ったり、会食の予定を入れたり、休日出勤や出張を頼んだら、家族の誕生日だからと断られることがあります。

最後に、日本人の周りにいる香港人の中には、日本語が堪能で日本に留学経験もあり、日本人と同じ感覚で話せる人がいると思います。相手が外国人だと言うことをつい忘れて、冗談で香港人を笑ったり、香港や中国の文化、社会、政治について不用意な発言をしたりすることは避けたいものです。多国籍社会の香港では様々な民族、生い立ちの人がいますので、常に節度を持って相手に接したいものです。