香港の人口推移

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香港の人口推移

香港の街は人が溢れていて、とてもエネルギッシュです。香港は世界で最も人口密度が高い地域であり、土地の狭さから建物は上へ上へと発展しました。昨今の香港では海外への移民が増加して人口減少が懸念されていますが、実際には移民以外にも様々な背景により人口の変動は起きています。

<返還~現在までの人口推移>

香港が中国に返還された1997年当時、香港の人口は650万人でした。その後も増加し続け、2019年には750万人を超えました。20216月末時点での人口は約740万人となり、この20年余りで約100万人も増加したことになります。

香港の人口を人種別に見ると、最も多いのは中華系で90%以上を占めています。華人以外で多い順にみると、出稼ぎ労働者のフィリピン人、インドネシア人、次いでインド人、パキスタン人、ネパール人、日本人、タイ人、韓国人、その他の人種、となります。これらの人口には永久居民以外も含まれています。日本人は現在約23000人が香港に居住しており、返還後の約2万人から増加し続け2016年の約26000人をピークに、その後は減少傾向にあります。

さらに従来は、香港居住者の他にも旅行者やビジネス目的の出張者などによる流動人口が常に20万人程度いました。新型コロナウイルスの水際対策による厳しい入境制限で、海外との自由な行き来が難しくなったため現在の流動人口はおよそ6万人にまで減少しています。

<人口で見た香港の歴史>

今から200年ほど前の香港は小さくさびれた漁村で、わずか7000人余りが暮らしていたと言われています。アヘン戦争、アロー号事件により香港がイギリスの植民地となると、香港は急速に発展が進みました。イギリスによる都市開発が盛んになる一方で、中国本土で内乱や飢饉が起こるたびに香港にやってくる難民は増え続け、香港の人口も増加していきました。難民は不法入境であり、見つかれば強制送還されるものの、1974年に「タッチベース政策(抵塁政策)」が採用され、界限街/ Boundary Street(かつての新界と九龍の境目、現在の旺角と太子の境を東西に横切る道)より南まで到達した難民には香港居住権が与えられました。この政策により1980年の廃止まで難民の受け入れが積極的に続き、香港における労働人口の増加と出生率の増加にも繋がりました。香港返還が決まるとカナダやオーストラリアへの移民ブームが起き、返還までの約10年のうちにおよそ50万人が香港を去りました。しかし香港返還以降は中国本土から香港への移民が増えたため87万人が流入し、香港の総人口としては返還後も増加が続きました。

<人口減の要因>

香港の人口は統計上、2019年以降は減少傾向となっています。死亡数が出生数を上回る自然減の他、海外への流出が香港への流入を上回ることが人口減少の要因に挙げられます。

自然減については香港も日本同様に晩婚化、少子高齢化が進んでいます。世界の平均寿命の一位は香港で、過去5年とも世界一を保持しています。その一方で香港は晩婚化、少子化が進んでいるため結婚しても子供を持たない夫婦は珍しくなく、子どもは産んだとしても1人という家庭がほとんどです。その背景には香港の格差社会、不動産の高騰がもたらす経済的な負担、将来的な香港の教育に対する不安など多くの要因が入り混じっています。多くの先進国と同様に香港も早ければ2025年には65歳以上の高齢者が総人口の21%以上を占める超高齢化社会になると予測されています。日本は2007年すでに超高齢化社会に突入しており、少子高齢化による労働人口の減少で、社会保障の給付と負担のシステムはアンバランスが生じています。しかし香港においては少子高齢化で人口の自然減が進んだとしても、海外からの移民を広く受け入れているため中国本土や海外からの人口流入により出生率とは関係なく、これからも人口増加が見込めます。

この一年、中国本土から香港への移住による増加が1万3900人で、香港住民の域外への流出は8万9200人に上ると言われています。イギリス政府は今年131日、BNO旅券保持者に対し特別ビザの受付を開始しました。BNOとは海外英国国民のことで、香港返還前に出生した香港居民はBNO旅券を取得できました。これまでBNO旅券でイギリスに入国した際、6か月のノービザ滞在が可能でしたが永住権や市民権は得られませんでした。しかし返還後に出生した香港居民はBNOを新たに申請することはできず、またBNO旅券保持者の子であっても申請はできませんでした。それが今年のイギリスの施策により5年間の居住ビザを申請することが可能となり、就業や就学もでき、BNO旅券保持者とその扶養家族も帯同することができます。また、5年滞在すれば永住権、さらに1年の延長で市民権も得られます。このビザはすでに6万人以上が申請しているということです。

現在は新型コロナウイルスの水際対策で中国本土や海外から香港への流入は少なく、香港からイギリスなど海外への人口流出だけが浮き彫りになっていますが、長い歴史の中で香港の人口は常に流入と流出を繰り返してきました。今後また各地との往来が可能になれば香港の人口は変動していくでしょう。